ものくろとーん【新門紅丸】 (ページ1)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:1,606 hit

ものくろとーんページ1

『ね、良いでしょ!?』

もう何回言っただろう。

何十回…何百回…何千回。とうとう親は許してくれたっけなぁ。
始めてきたはずの浅草にすら懐かしさを持つ。

皇国とは違った賑やかさ。夢見た通りの〝雷門〟をくぐった。

『うう、念願の……〝浅草〟!』

願望がかない手を握り締める。ああ嬉しい!けどなぁ……、お母さんの声が蘇った。

「もう…。けど、気を付けなさいよ?原国主義者って、変わってるんでしょう?」

『……何言ってんのよ、お母さん…。』

ため息をつきながらも、住んでいる親族の家へ足を進める。

ああ、見たことある!見た通り!

嬉しさで興奮しながらその日は半日町を回ってた。

「…………。」

あの時気づけばよかっただなんて。あの時もっと注意しとけばよかったなんて。

今の私に、叱ってくれる人も誰もいない。今の私に、怒ってくれる人は誰もいない。

今の私に、注意してくれる人は〝もう〟いない。

いるのは堕ちた、私だけ。

〝俺だけ見てろよ、A〟