マジの恋 (ページ1)

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episode 1 ページ1

昼下がりの放課後。

眼鏡をとってシャツのボタンを二つ外し、ブレ

ザーを脱いでから袖を捲る。

春と初夏の間くらいのこの季節は、風も通るし

暖かい。梅雨入り前の少し湿った空気がいい気

持ちにさせてくれる。

一つ伸びをして背もたれに脱力した。

普段の賑やかな教室では外さないボタンも捲ら

ない袖も、一人の時は気兼ねなくできる。

クラス一の真面目ガリ勉、みたいな印象が根付

いちゃってから、何となく素でいづらい。

別に悪いことなんて何もしてないけど。

電気を消しても十分明るい教室の一番後ろ、窓

側。そこが俺の席。前は亮。

でも今は一人。

先生たちのミーティングだか何だかの都合で昼

休みに帰された生徒たちの中には、校庭で部活

の自主練習をまとまってやってたりする人もい

るから、誰もいない教室でも人の声はよく聞こ

える。

委員会の仕事に行った亮と帰るためにかれこれ

30分は待ったけど、まだ来る感じしないし。

今日はもう帰ろーかなぁ。

そう思って窓を閉めようと席を立った瞬間、目

の前にサッカーボールが飛んできた。

安田「うぁ"ｯ！！？」

間一髪、反射神経をフル活用してボールをギリ

ギリで避けた。

三階やぞここ…こんなん蹴るのは絶対あの人や。

安田「村上くん危ないわぁ！！」

見下ろす校庭の端には、案の定制服姿の村上く

んがいた。

サッカー部引退したばっかりでも、勉強せずに

よくボールを蹴ってる。

村上「スマン！！平気かぁ？」

安田「もう少しで顔飛んでったわー」

三年生、つまり一個先輩だけど、村上くんの性

格のおかげで親しくできてる。

安田「受験生は勉強が優先やぞー！はよ帰って

やりぃや！」

村上「あと少し！すばるがくるまでー！」

一人でやってるのかと思ったら、よこちょとあ

ともう一人いた。

見たことない。でも横のよこちょよりもでかく

見える。顔もよくは見えへん。

てか、うっかりしてたけど今の俺眼鏡すらして

へんやん！

同じクラス、いや学年に見られたらイメージ変

わって変なんなるわ。

ぼんやり見える顔も記憶にはないし、その子が

一年生であることを祈ってそそくさとボールを

投げて顔を引っ込めた。