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タクシーの中で今日の写真を見返す。
ふと卒業式に撮った写真を思い出して 大人になったんだ、と感じた。


「あ、ここで大丈夫です」


お金を払って履きなれないミュールと少し重たくなった紙袋に少しぐらつきながらタクシーを降りる。


こつこつ、とヒールの音が響く。バッグの中を漁ってみたけれど鍵がない事に気づいてエントランスで部屋の番号をうってインターホンを鳴らす。すぐに聞こえたシルクの声。



「鍵忘れたー」
「ばーか」
「ごめんごめん」

オートロックのドアが開いたのを確認して紙袋とバッグを持ち直して部屋へと向かった。




「おかえり」
「ただいま〜」

家のインターホンを鳴らすとすぐにシルクがドアを開けてくれて、ドアを支えながら荷物も持ってくれる。


「どーだった?」
「楽しかった〜 相手の人5つ上の商社マンなんだって。」
「結構人集まった?」
「そうだね、会社の人とか多かったイメージ」
「すげーな。」


玄関に座ってミュールを脱いでため息をつく。
慣れない靴にアルコールにと浮腫んだ足が少しだけスッキリした。


「次は誰が結婚するんだろ」
「女子ってそういう話好きだよな」
「ほぼ競争なとこあるよね」
「あーめんどくせ」
「男ってそういうとこあるよね」


笑って言うとシルクも笑って手を差し伸べてくれる。
それを握って引っ張られるように立ち上がるとミュールを脱いだからか足元が少しふわふわとしてよろけかけた。


「…酔っ払ってんの?」
「ううん 高いヒールだったから」
「ならいいけど」
「あ、写メ見る?」
「ん ちょっと気になる」
「ドレス可愛かったよ」


リビングに行くまでシルクの手が離れる様子はなくて。編集をしていたのかリビングには起動したままのパソコンと飲みかけのペットボトルとコンビニ弁当のゴミがテーブルに広がっていた。


「着替えてくる」
「はいよ 荷物ここ置いとく。風呂は?」
「シルクは?」
「俺はいい 入るなら沸かすけど」
「入ろっかな」
「ん 着替えといで」


離れた手。

寝室に入ってドアを閉めて着ていた服をハンガーに掛けてTシャツと部屋着用に買ったショートパンツに着替える。
どんどん気持ちがオフになっていって、急に眠くなってあくびが出た。


今日の事なのに、結婚式が随分前のように感じた。


寝室を出てバッグから携帯をだしてからシルクの隣に座る。

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作者名:yuyu | 作成日時:2018年5月20日 3時

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