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服を着替えて廊下に出るとリビングの電気がついていた。起こしてしまった、と思いながらそっとリビングのドアを開けると少し寝癖をつけたシルクが眠たそうにこちらを見た。


「シャワー、浴びたの?」
「寝汗かいた…起こした?」
「んーん、そんなことない」


布団の上に座ってタオルで髪を拭く。時計は五時前を指していた。


「よいしょ、」
「っ、どしたの」
「やってやる」


シルクが私の目の前に座ってタオルで勢い良く私の髪を拭いた。水が顔に滴って ぎゅ、と目を瞑る。


「いい匂い」


手が止まってそう呟かれて、ゆっくり目を開けるとシルクの首元がすぐ近くにあって少しだけ背中を反らす。


「…甘い」


頬にシルクの手が触れて、顔が近づく。


「しるく、」
「ごめん」


謝りながら、触れた唇。頭が真っ白になって一瞬だったのか、長かったのか分からない。


「…ごめん」
「な、」


なんで、と言おうとして顔を俯かせて 口を噤む。聞いてはいけない、そう思った。聞くのが、怖い。


「…なんか言えよ」


その言葉に首を振る。シルクは「あー…」と声を上げた。


「嫌なら嫌って言って」


もう一度近づく顔。吐息が触れる。


「…戻れねえよ」
「いい、よ」


そう呟いて重なる唇。
一度離れてまたゆっくり触れる。

どきどきとうるさい心臓。


誰かとキスをすることが初めてな訳でもないのに、こんなに緊張して、恥ずかしくて、嬉しいと思うのは…諒だから。ずっと隠してきた気持ちが溢れ出しそうになる。


「俺、Aが好きだった。ずっと」
「…ん」
「だから俺がAのこと守ってやりたい」


真剣な目が私を捕らえて、ぎゅ、と握られた手から熱が伝わる。空いた手が私の背中にまわってそのまま抱きしめられる。


「俺のそばに居て。どんな形でもいいから…」
「わたし、」「いい 言わないで」
「りょう…」
「好きだ 本当に好きなんだよ、おれ…っ」


私の肩に顔を押し付けて「A」と呟く。



「諒の好きなようにして欲しい」


私も彼の頭に顔を寄せて、そう言うと諒は顔を上げて私の頬に手をそえて降り注ぐキス。



数回触れて、離れてを繰り返して気づけば彼の後ろに天井が見える。




戻れなくたっていい。

だって、やっとあなたの一番になれるんだから。

さようなら、臆病者の私。



電気を消して、優しい手つきで触れられた場所が熱くて、漏れる吐息さえも勿体無いと思うの。

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作者名:yuyu | 作成日時:2018年5月20日 3時

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