【雪男】雪降る夜の嘘月Ⅱ (ページ18)

今日:9 hit、昨日:3 hit、合計:8,894 hit

・ページ18

.

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

　-お待たせ、行こっか。
　今日いつもと雰囲気違うね！
　似合ってるその服

　：あ、りがとうございます、！

いつもより早く起きて何時間もかけて選んだ服
ヒナに協力してもらって
化粧とかヘアアレンジにも挑戦してみた！
目黒さんの言葉に全てが報われた気がする
今日は、初めてのデート！
目黒さんの運転で、
少しだけ遠いところまでドライブする予定

　：どこに行くんですか？

　-俺の一番好きなとこ！

連れてきてくれたのは
まだ昭和感が残る駄菓子屋さん
種類も豊富で、店番をするのは笑顔が可愛い老人夫婦
昔よく学校の帰りに行った駄菓子屋を思い出して
あの頃みたいに夢中でお菓子を探した

　：あ、当たった！

　-マジ！？それ、3枚集まったら、
　 1個無料になるやつだよね？

　：そうなんですか？もっと探そ～！

　-あ！これ岩本くんが好きなやつ

　：へぇ～、かわいい(笑)

二人ではしゃぎながらお菓子を食べて
車の窓から流れる街を見ながら
たわいもない話をする

　-ドラマいつからだっけ？

　：再来月の4日からです！

　-再来月か、観るよ！
　やっぱすごいよな主演、俺も早くやりてぇ

　：目黒さんならすぐオファー来ますよ！

　-やっぱりさ、悪役とかもやってみたいけど、
　キスシーンのある恋愛ドラマとかにも挑戦したい

　：キスシーン、

好きな人の夢は叶ってほしい
それは私の夢でもあるから
だけど、キスシーン…
きっといつかはくるって分かってるけど
想像しただけで心が痛くなる

　-もちろん、そのヒロインはAね？

　：が、頑張ります、、
　
　-ん、見て！

　：わぁ～綺麗！！

　-ちょっとだけ外出てみよう！

目の前に広がる夕焼け雲と左手の温もり
巡ってきた幸福感に何故か涙腺が緩む
二人で見る2回目の夕日は
不思議と1回目とは全然違う景色に見える

　：あ、沈んじゃう…

　-全然見れなかった

　：え？

　-Aのことばっか見てた

　：っ、！

　-キスしていい？

きっとこういうのは慣れてるだろうから
さらっとするんだろうな～
なんて思ってたけど
聞くんだ…
少しぐらいそこは強引でもいいのに
なんて思うのは
きっと恥ずかしさに耐えられないから

顔が見れず頷くと
私の顎をくいっとあげて目線を合わせる
少しずるくはにかめば
あっという間に視界が暗くなり
唇に感じる温もり
このまま時間が止まればいいのに
そう願ってしまうほど
苦しいぐらいに甘いゼリーの味がした