第七話 ページ12
「椿さん?」
──ハッと、意識が引き戻される。
司書の先生の声がして、慌てて顔をあげると、更に二十分が経っていることに気が付いた。
知らず知らずのうちに、夢中になって読んでしまっていたらしい。
少し名残惜しく思いながらも本を閉じて、棚に仕舞う。
幸いにもほとんど整理は終わっていたため、手早く終わらせてから返答した。
『先生。7類の整理、終わりました。』
「ありがとうな、助かったわ。」
棚から離れてカウンターの方へ行くと、礼を言われてぺこりと会釈をする。
家に帰ってもゴロゴロするばかりだから、こうして感謝されるとなんだか嬉しい。
いいことをしたな、という気分になる。
それに今日は、新しい本にも触れられたし。
そのせい、というか、帰る時間は遅くなってしまったけど、後悔はない。
『…それでは、そろそろ帰りますね。さようなら』
「おん、また明日な」
先生に挨拶をして図書室を出て、昇降口へ向かう。
いつもより一時間くらい、遅い時間。
靴を履き替えて、校門へ向かいながら、不意に思い出す。
『(そういえば、一昨日、ここで)』
幼馴染からのLIMEに気付いて、立ち止まって。
宮君に、遭遇して。
告白されたんだった、と。
今でも、実感がない。
というと、少し違うような気もするが。
なんというか、信じられないのだ。
『(私の、どこがいいんだろう。)』
そう思わずには、いられない。
否、どこでもないのかもしれない。
彼は一目惚れ、と言っていたし、クラスも別。委員会は当然のこと、これまで学校内で碌に顔を合わせた覚えがない。
あの時、私を見つめていた瞳にきっと、嘘はなかったけど。
夕暮れの、なんだかムーディーな雰囲気に引っ張られて、勘違いしたのかも。
なんて。
『(好意を疑うのは、失礼かな。)』
ううん、と内心唸りながら、歩を進める。
でも、これはある程度、仕方のないことだと思う。
それほど、彼の人気は凄まじく、逆に私は日陰で生きているような人間だから。
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宮兄弟推し - 推し=恋愛対象の人間です。宮兄弟ガチ恋勢(わい)には、たまらん作品です。ありがとうございました! (5月18日 20時) (レス) @page28 id: e2e9177bef (このIDを非表示/違反報告)
風矢@二次元待ち(プロフ) - とても幸せな小説でした。おつかれさまです! (2023年2月21日 15時) (レス) @page28 id: 8fd965734e (このIDを非表示/違反報告)
にゃん吉(プロフ) - 胸がギュンってなりました🤦♀これからも応援してます!更新頑張ってください🙇🏻 (2022年11月23日 3時) (レス) @page21 id: 4862dc7ef3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:音琥 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/jjijwihief/
作成日時:2022年11月19日 18時