検索窓
今日:6 hit、昨日:21 hit、合計:164,194 hit

第七話 ページ12

「椿さん?」




──ハッと、意識が引き戻される。
司書の先生の声がして、慌てて顔をあげると、更に二十分が経っていることに気が付いた。

知らず知らずのうちに、夢中になって読んでしまっていたらしい。
少し名残惜しく思いながらも本を閉じて、棚に仕舞う。


幸いにもほとんど整理は終わっていたため、手早く終わらせてから返答した。



『先生。7類の整理、終わりました。』
「ありがとうな、助かったわ。」



棚から離れてカウンターの方へ行くと、礼を言われてぺこりと会釈をする。
家に帰ってもゴロゴロするばかりだから、こうして感謝されるとなんだか嬉しい。

いいことをしたな、という気分になる。
それに今日は、新しい本にも触れられたし。

そのせい、というか、帰る時間は遅くなってしまったけど、後悔はない。



『…それでは、そろそろ帰りますね。さようなら』
「おん、また明日な」



先生に挨拶をして図書室を出て、昇降口へ向かう。
いつもより一時間くらい、遅い時間。

靴を履き替えて、校門へ向かいながら、不意に思い出す。



『(そういえば、一昨日、ここで)』



幼馴染からのLIMEに気付いて、立ち止まって。

宮君に、遭遇して。
告白されたんだった、と。


今でも、実感がない。
というと、少し違うような気もするが。

なんというか、信じられないのだ。



『(私の、どこがいいんだろう。)』



そう思わずには、いられない。
否、どこでもないのかもしれない。

彼は一目惚れ、と言っていたし、クラスも別。委員会は当然のこと、これまで学校内で碌に顔を合わせた覚えがない。


あの時、私を見つめていた瞳にきっと、嘘はなかったけど。
夕暮れの、なんだかムーディーな雰囲気に引っ張られて、勘違いしたのかも。

なんて。



『(好意を疑うのは、失礼かな。)』




ううん、と内心唸りながら、歩を進める。
でも、これはある程度、仕方のないことだと思う。

それほど、彼の人気は凄まじく、逆に私は日陰で生きているような人間だから。

第八話→←**



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (268 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
669人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 稲荷崎 , 宮治
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

宮兄弟推し - 推し=恋愛対象の人間です。宮兄弟ガチ恋勢(わい)には、たまらん作品です。ありがとうございました! (5月18日 20時) (レス) @page28 id: e2e9177bef (このIDを非表示/違反報告)
風矢@二次元待ち(プロフ) - とても幸せな小説でした。おつかれさまです! (2023年2月21日 15時) (レス) @page28 id: 8fd965734e (このIDを非表示/違反報告)
にゃん吉(プロフ) - 胸がギュンってなりました🤦‍♀これからも応援してます!更新頑張ってください🙇🏻 (2022年11月23日 3時) (レス) @page21 id: 4862dc7ef3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:音琥 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/jjijwihief/  
作成日時:2022年11月19日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。