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第九話 ページ13

やってきたその時。




噓告だという前提の演技とはいえ、角名君にかかる負担がそこそこ大きい。
好きでもない、しかも友人の面倒な彼女に告白なんてさせてごめんな…という罪悪感が滲み出てしまっていたのか、目の前にいる彼は



「まぁいいよ、ここまで来たらちゃんとやる」



と軽く笑っている。



部活前というわけにはいかないから、部活の後、
部室から着替えて校門へ向かって出てきた侑が目撃しそうな場所で。

そんなシチュエーションで、私達は向き合っていた。
一足早く、急いで着替えてきてくれたのだろう、角名君は少し息が切れている。



ここは、校門から少し離れたところに立っている木の下だ。
私は呼び出された体でそこで待っていて、角名君が今やってきた。そんな状況だった。



「…あ、侑。」



ボソッと呟かれたその名前。
つまり、もう私達が一緒にいるところは彼からも見られている、ということで。

緊張で固まりそうになる中、なんとか気を紛らわせる。


「ごめんね、残らしちゃって。」
『ううん、大丈夫。何か用?』


いい感じに間をおいて、角名君が演技を始めた。
なんていう自然さ。
彼の演技力の高さに脱帽である。


「あー、えっと、その…」
『うん。』

「好き、なんだよね。Aのこと」
『……え』



真っ直ぐに見つめられて、少し驚いた。
本当に、演技なのかと疑いたくなるほど、その姿は真剣で。

言葉に、詰まる。



後ろから、侑の視線を感じた。
いつもなら、迷いなくごめんなさい、と断る。

でも、今それをしてしまったら、焦らせるどころか安心させてしまうとわかっていた。
から。



『…ありがとう、』



とだけ言って、一旦、言葉を切った。
瞬間、背後で、駆け出していく足音。


くるりと振り返ると、もうそこに、侑の姿はない。
でも確実に、聞いていた。見られていた。

彼の視線を、気配を、ハッキリと感じたから。





「…いいの?放っといて」
『明日、四日目』
「…そうだけどさ。」




『ねえ、角名君。』
「なに」
『ごめんね。』
「……うん。知ってた。」

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サラミ - 初コメ失礼します。もう設定から面白くて、どんどん読んでしまいました!!更新楽しみにしています。主様のペースで無理しないように頑張ってください!!!上から目線ですみません。 (2022年11月7日 21時) (レス) @page18 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:音琥 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/jjijwihief/  
作成日時:2022年11月2日 18時

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