自責 ページ23
「オイ白拍子。」
声をかけられて、ハッと顔をあげればいつの間にこちらに来ていたのか、五条が不満そうに俺を見つめていた。
たった今考えていた相手が目の前にいて思わず動揺するも、誤魔化すように微笑んで
『なんだ?五条。』
と首を傾げて見せる。
すると腕を引っ張られて、どこかへ連れていかれる。
『えっ、…五条?どこ行くんだよ。』
困惑するも引っ張られるまま、何も答えない五条に着いていく。
ちらりと肩越しに夏油と家入を振り返れば、気にするなというように手を振られた。
連れていかれたのは、五条の部屋だった。
ひたすら無言で歩いてきたが、何を言われるのだろうか。
彼が俺をここに連れてきたのは、二人には聞かれたくない話だからだろうというのは、なんとなく察していた。
『…五条?』
俺を部屋に入れるなり、腕を離して立ち尽くし俯いている。
そっと名前を呼んでも応答はない。
からかったことに対する文句?思いつく原因に対する非はすべて俺にある、甘んじて受け入れよう。
それがもう関わるなと言う言葉だったとしても。
黙って彼からの言葉を待っていれば、不意に振り返った五条に壁ドンされる。
あの時の逆だな。
なんて既視感を覚えた刹那、近づく距離。
『(………え?)』
驚いた。
五条が、その唇を自ら重ねてきたのだから。
至近距離で、息が詰まるほどの切なさを孕んだ美しい瞳と目が合った。
今にも泣いてしまいそうな、不安げに揺れる瞳と。
拙いキス。
慣れていないのだろうに、何度も何度も、離れては重なり合う。
意図を掴みかねて、とん、と軽く肩を押し距離を取れば、ぽろりと透明な滴が零れた。
『…っ、拒絶したわけじゃない。どうしたんだ、五条、』
その水滴を指で拭って、頭を抱き寄せ己の肩に押し当てる。
彼の耳に囁くように、絶対に引いたりしないから、と付け足した後どうしてこんなことをしたのかと問いかけ。
その答を待ちながら、自分の感情も整理し始めた。
『(…初めての、五条からのキス。)』
どういうことだ?
確かに、からかうたびにその綺麗な顔を赤くして照れていたけれど。
まさか、本当に?
つい先程、ようやく己の醜さを自覚すると同時にその感情を認められたばかりだというのに。
とてもじゃないが、信じられなかった。
態度からすれば疑う余地はないが、それは一時的な揺らぎなんじゃないかとどうしても思ってしまう。
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moo(プロフ) - 甘々の溺愛最高です! (2023年4月19日 8時) (レス) @page49 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:音琥 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/jjijwihief/
作成日時:2022年3月12日 4時