【呪術廻戦】雨を乞う。【男主】 (ページ19)

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「カップルだって証明できればいいんですよね？」

食い下がる五条。
女性客たちから感じる謎の期待の目線で頭が痛くなってくる。

どうせ逃れられないなら、とこちらも演技のスイッチを入れた。
いっそからかい倒して照れさせてやる。という気持ちで。

『…悟。』

立ち上がって、向かいのソファ席に座る五条に手を伸ばし、その顎を少しくすぐって引き寄せる。
サングラスを取ってやれば、途端、正気に戻ったのかじわじわと赤くなる五条。

もう片手を熱を孕んだ頬に滑らせて、目を細める。
きゅ、と目を瞑った彼の唇に己のそれを重ねて、十秒程経った後に離れ、添えていた手をぱっと解放した。

『これで、注文しても大丈夫でしょうか。』

ふわりと愛想の良い笑みを浮かべ、首を傾ける。
は、はい。と頷いて去っていく店員も、周囲の客も皆一様に顔を赤く染めていて、やりすぎてしまっただろうかと五条に視線を戻した。

ら。

「おまっ、………。」

真っ赤になって唇に腕を押し当てる姿があった。
そっと腕を伸ばして、びくりと警戒するように揺れた肩をよそにサングラスをかけ直させる。

『五条が食いたいっつったんだろ。』

ふ、と微笑んでそう言えば、机に突っ伏して腕に顔を埋めてしまった。
残念。
からかった後のその表情が見たかったのに。

そんなことを思いながら、再びコーヒーのカップを持ちあげ口につける。
視線を感じ五条を見やれば、遠浅(とおあさ)の透き通る海のような瞳と目が合った。

それだけでぼっと更に赤くなる彼を見ていると、自惚れそうになる。

『(…本当に、俺に惚れているみたいな。)』

嫌がるではなく、照れたその時点で、もうだいぶそう思ってしまうのに。
もし五条が俺のことを好きなのであれば、と。
そうだったら嬉しいと思うのは、きっと。

けれど、五条ほどの照れが俺にないのは、まだその気持ちがささやか過ぎるからだろうか。
それとも、元々俺はそういう初心なタイプじゃないんだろうか。

呪術一直線で進んできた俺は初めてのこの気持ちを、未だわかりかねているようだ。

ただひとつ確かなのは、からかいたいと思うのも、可愛いと思うのも五条だけだということだった。