【呪術廻戦】雨を乞う。⑦【男主】 (ページ7)

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体温ページ7

フライト十二時間。

傑の件で、高専三年の七～九月は戻ってきたとはいえ。
それから更に一年と少しが過ぎた、三年越しの”帰宅”である。

もう卒業するのか、なんて、高専に居なかったから実感はないが。

空港に降り立ち、手続きを済ませ、預けた荷物を回収。
その後、タクシーを捕まえて東京の郊外まで送ってもらう。

時差ボケを危惧して、フライト中に寝ておいたから体調面は問題ない。

久し振りに見た高専は、やはり無駄に広く自然が多い。ここで過ごした期間は一年と少しだけだが、これからも高専を拠点に動くのだろうし。
その一年と少しが濃縮されていたから、懐かしさも思い入れもある。

『…ただいま。』

漸く、言えた言葉。
一時的に、ではなく、ただいまと言えることが嬉しい。

ひとり呟いただけでも、複雑な痛みと喜びが混じって、泣きそうになってしまった。

寮の前に立って、また部屋で寝ていたら今度はなにを言われるかなと思いつつ、自室へ向かう。
鍵を取り出し、扉を開けて。

靴を脱ぎ、音を立てぬように気を付けながら廊下を歩む。

『悟？』

寝室に着いて、翌朝までできることはないからと再び眠りに落ちようとした時、視界に入るその姿に驚いた。
ベッドに寝転がる、愛しい人の姿に。

帰ってきた俺の気配に気づいていないのだろう、すやすやと眠り続ける悟。
今日帰るということは言ってあったが。
まさか、部屋で待っているなんて思いもしなかった。

『(……悟らしいな。)』

起きて待っているならまだしも、ベッドで先に寝ておくなんて。
少し笑みが零れて、その愛らしさに目を細める。

楽な格好に着替え、そっと布団に潜り込めば、その身体を包み込むように抱き締めた。

触れる熱。
優しい体温。

それに、帰ってくる途中で感じた何よりもの懐かしさ、愛おしさを覚えて。
うとうとと眠気を感じながら、もう離さないと強く掻き抱いた。