【呪術廻戦】雨を乞う。⑦【男主】 (ページ35)

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数年越しだったとはいえ、あのツァイラー・ヴィルヘルム・アーベルの弟子が。
長年、存在しなかった教え子が誕生したということは、既に周知の事実であった。

その正体や容姿はわかっておらず、生み出される旋律と背丈だけが、まるで伝説のように噂として残っている。

「Jawohl. Vor allem war ich erleichtert, dass es mir gut ging. Ich möchte deinen Geliebten treffen. (そう。元気そうで何よりだよ。私はそろそろ、君の恋人に会ってみたい気もするけれど。)」

そんな中、弟子の存在について言及せず、俺に戻ってくるようにも言わないアーベルさんは本当に良い人だと思う。

好奇心からか、そんなことを言い始める彼に、少し笑みが零れた。
確かに、俺は未だにアーベルさんの弟子だということを悟たちには明かしていない。

彼を紹介するタイミングは、結婚式に呼んだ時、と言ってあったから。
日本に戻ってくる前、一年ほど前に。

『Ich bin erst neunzehn Jahre alt. (私はまだ19歳ですよ。)』

年齢としては結婚が可能だが、将来を約束できる年ではない。
まだ未熟だ、と言っても、見透かしたようにアーベルさんは笑う。

「Dein Geburtstag ist Dezember, richtig? (十二月には君の誕生日があるだろう？)」

それを聞いて、俺もくつくつと笑った。

──その通りだ。
彼は俺のことを本当によく理解している。

少し前から準備している、”とある計画”の正体。
それは、俺と悟の誕生日の日に、プロポーズをするというもの。

冗談半分で決まった婚約のきっかけのひとつ、同日の誕生日。
これ以上に、適した日はないと判断した。

現に、今日の外出だって、その時の指環の下見が理由なのだから。