【呪術廻戦】雨を乞う。⑦【男主】 (ページ31)

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そのまま、ぎゅうと強く抱き締めつつ、温もりを共有する。
段々と寒くなってくるから、そろそろ風邪の対策も始めないと。

『ハァ……幸せ。』

そんなことを考えながらぽつりと呟けば、そうだね、なんて相槌が打たれる。

頼さんが心配だが、それも今では日常の一部で。
絶対に、何があっても助ける気でいるから、必要以上に怯えたりもしていなかった。

彼のこと以外は、なんら変わらず順風満帆。

呪霊は季節によって数が増えたり減ったりを繰り返しているが、それはもうずっと変わらないことなため、すっかり慣れてしまった俺達が思うのは。

平和だな、と、そんなことくらいで。

「A、僕アレ食べたい。」

やがて、自然とハグをやめた後に、照れくさそうに目を逸らした悟が言う。
色白で綺麗な指に引かれて彼の後を着いていけば、その先にあったのは喫茶店だった。

どうやら、食品サンプルとして置かれていたプリンが気になったらしい。
成程、悟が好きそうだと頷き入店する。

『あ～……珈琲、サイズはMで。ミルクと砂糖は要りません。』

その腰を抱いて注文すれば、ぶわ、と途端に真っ赤になった悟が視界の隅に映る。
付き合いたてのころにこんなような瞬間があったな、と既視感を感じて、思わず笑みが零れた。

大分、色々なことがあった。
そのどれもが、強烈に記憶に焼き付けられた、大切な思い出だ。

そして、思い返すどの記憶でも、必ず悟のことを想っていることに気づいて心中苦笑する。
居なくてはならない存在。
もう手放せない、生涯でたったひとりの愛しい人。

『…可愛いな。』

店員さんが注文内容のものを用意してくれている間に、まだ顔が赤い悟にそう言えば、更に頬が赤く染まる。

花恥ずかしい笑み。
ああ、これだから悟は。本当に。

何度でも惚れ直させられる、こちらの身にもなって欲しいものだ。