【呪術廻戦】雨を乞う。⑦【男主】 (ページ20)

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『本当に、ただの黒猫なのか？』

もし仮に、コイツが本当に黒猫だとして。
予想した通り飼い主がいたとして、その人が偶然にも日本に来、猫と共に寺を訪れる──なんてそんなことがあり得るのは、それこそ天文学的確率だ。

幸運の象徴であるはずのその存在が、やけに不気味に思えて眉を顰める。

『(‼…コイツ、濡れてない。)』

数瞬、驚きで硬直し、思考が回り訝(いぶか)しく思ったところで、気付く。

今の季節は、梅雨。
現在進行形で雨が降り続けており、それはここ数時間前から変わらないこと。
それなのに。

その黒猫の体は、全くもって濡れていなかった。
木々の下を通ったとか、屋根の下にいたとか。それにしたって、この紫陽花の元へ来る過程で、絶対に濡れるはずなのに。

違和感。

違和感。

「にゃ～ん」

再び、猫が鳴いた。
真っ直ぐにこちらを射抜いていた金色の瞳が逸らされて、黒猫はついと歩き出す。

何故か、その後を追わなければいけないような気がして、短い歩幅を辿り追えば。
向かう先は、どうやら門の方向…この寺を出るようで。

戸惑いながらまた一歩、足を進めた瞬間に、俺は酷く驚かされることになる。