【呪術廻戦】雨を乞う。⑦【男主】 (ページ13)

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着いた先は、山。
桜の木が沢山植えられている、この季節にはピンクに染まる山だ。

乗せてきてくれた補助監督さんは、車を麓(ふもと)に停めて、

ここからはどうぞ四人で。

と言い残して去っていく。

砂利道を進み、丸太(まるた)で作られた階段を上れば、そこまで高くないその山はすぐに登りきれた。
頂上は開けていて、隅の方にある東屋に四人で寄り。

屋根の下にある簡素な椅子に、並んで座る。

『綺麗だな。』

白くも、薄い赤にも見える桜の花びらがはらはらと舞って落ちていく。
散った後も、地を彩り絨毯となるその姿は、どうにも美しく風情を感じざるを得ない。

水面に浮かぶ花筏(はないかだ)や、雨によって落とされる儚い様も魅力だが、やっぱり満開とその奥に映える青空を見るのも、爽快な気分になるというものだ。

朽葉色(くちばいろ)の幹に連なって咲く、そんな姿に見蕩れていれば、

「何か買って来ればよかった。」

なんて言い始める硝子によって、一気に平常に連れ戻される。

花より団子か、わかってたけど。
コンビニにでも寄っていれば、焼き鳥やらなんやらで風情なんて感じる暇もなかったかもしれない。
寄らずに送ってくれた補助監督の方に感謝。

「静かだね。」

と、傑。
確かに、満開の季節の割には花見に来ている人が少ない気がする。
郊外の、更に人気が少ない山だからそんなもんだと言われればそれまでだが。

悟はさっきから、俺の腕を抱きしめて擦り寄って来て以来動く気配がない。
桜を見ろよ桜を。

まあ、嫌ではないけど。