【呪術廻戦】雨を乞う。⑤【男主】 (ページ6)

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やがて発進した車に揺られて、ぼーっと窓の外を見つめていると、何故だろう、頼さんを思い出してしまって少し切なくなった。

こうして、何度も彼の車に乗せてもらった。
その優しさに、甘やかされて癒されて。

『(…似てる。)』

似てるんだ、アーベルさんが彼に。

アーベルさんの方が、少しやんちゃというか、無邪気で子供っぽいところがある面白い人だけど。
頼さんは素敵な大人という感じで、どこまでも余裕があったから。

それでも、俺を大事に思ってくれて、よくしてくれるところとか。
行動に垣間見(かいまみ)える、優しさが似ているような気がして。

そう言えば、年齢も似てるんじゃないかと、ぼんやり思い返す。

『(アーベルさんが29で、頼さんは…確か、27だったような。)』

二歳違い、アーベルさんの方が年上だったのか、と少し驚きつつ。
その性格の差異で、なんとなく逆のような感覚があったために。

透明な窓の向こう、流れていくウィーンの街並みを眺めながら、黙りこくって思考に集中していた俺は、知らなかった。

「( Du siehst oft so aus. Sehr ... trauriges Gesicht. Was um alles in der Welt versteckst du und wonach suchst du? (君はよくそんな表情をしているね。とても…悲しい顔。いったい何を隠していて、何を探しているんだ？) )」

ミラー越しに俺の様子を見守っていたアーベルさんが、そんなことを考えていたこと。
心配そうな、瞳を向けていたことを。