【呪術廻戦】雨を乞う。⑤【男主】 (ページ45)

今日:12 hit、昨日:12 hit、合計:10,526 hit

合間ページ45

時は過ぎて、日本に戻ってきてから一ヶ月が経った。

現在、八月。
段々と蒸し暑くなってきて、青葉照り蝉(せみ)も盛んに鳴き始める。

任務から任務への移動途中で風鈴の涼やかな音を耳にしたり、スーパーなんかで西瓜(スイカ)を見かけることも多くなった。

何より、暑くなった故の、鬱々とした気持ちから呪霊が湧きまくっていた。
呪術師とて辛いものは辛いのだから、正直勘弁して欲しい。

『水分補給だけは絶対忘れるなよ。』

熱中症とかシャレにならない、と、色々な人に言って回ったが。
もう少し経てば、この忙しさも緩和はされていくはずだ。
それまでの辛抱だった。

そう考えると、この時期にこっちに帰ってきたのは成功だったな。
元々人不足なのに、呪霊が多い時期に更に人が減ったらと思うとゾッとする。少しでも数を減らせるなら、それが喜びだった。

『海とか、プールとか。』

最近、行ってないよな、と、教室でぼやいていれば、偶然にも任務の隙間時間が同じだった悟が言う。

それはAが頼さんの捜索に全神経注いでたからだろ。

と。

『成程、通りでここ数年、青春とか云々ってやった記憶がないと思った。』

くつくつと喉を鳴らせば、呆れたように見つめられる。
オマエ、そういうタイプだったっけ。
なんて、言いたげな瞳で。

不意に目が合って、それをきっかけにふと悪戯、というか揶揄いを思いつく。
教室に二人なのを良いことに席を立ち、彼の傍に歩み寄れば、その頬に指先を触れさせて。

「…え、」