【呪術廻戦】雨を乞う。⑤【男主】 (ページ33)

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弱者の、非術師の醜さが鬱で、呪霊を取り込むのが苦しい気持ち。
そんな弱者のために、仲間が死んでいくのが嫌だという嫌悪感。それ故に、弱者を見下してしまう気持ち。

それがわかって、やっぱり傑は優しいな。と言えば、驚いたように目を見開く姿が視界に入る。

『俺は、正直、必要な犠牲まで無理して助けようとは思わない。』

簡単に言えば、俺は非術師を助けようと思って祓ってるわけじゃないってこと。

そう言えば、息を吞む音が聞こえる。
以外だ、と言わんばかりに。

『結果的に助かってる、助けているということにはなるかも知れないけど。』

俺にとっては、家系がそうだったから、従ってやってただけ。
それが当たり前だったから、見かけたら祓う、任務でも祓う、それだけ。

でも今は、この術式(ちから)があって良かったと思うよ。

『そのおかげで、お前らを助けられるから。守れるから。』

傑はもう少し、自分本位で生きていい。
あくまでも弱者を守るためにその術式(ちから)を使おうとするオマエはすごく優しいし、立派だけど。

守るため、その”守る”対象を少し変えれば、いくらか気分もマシになるんじゃね。

『傑が任務を請け負ってくれた分、俺達も少し楽になる。その逆もまたしかり。』

そうやって助け合ってきてる。
弱者を守るためじゃなくて、仲間に楽をしてもらうために、なんて言ったら俺がすごく傲慢な奴みたいだけど。

その頭に手を伸ばしてわしゃわしゃと撫でた。

『まあ、なんだ、…無理はするなよ。』

オマエが嫌じゃない形で。オマエがやりたい風に、使っていいんだ。
考え方を変えるだけで、楽になれるならそれが一番だし。

な、と言えば、傑はあっけに取られたような表情をした後、また少し微笑んで、

「A、君はいつも、」

私が想像もしないようなことを、当たり前のように言うね。

と呟く。

『そうか？』

考え方が違うのもまた、人間の魅力だからな、と適当なことを言って笑えば、笑みが返ってきて安堵する。

堕ちてしまうくらいなら。
呪術から遠ざけるのもありだ、と俺は考えていたけど。
傑は、俺達の、仲間のことを大切に思ってくれているからこそ、離れられなかったんだと話して気づいた。

本当に優しい、なんて、今更ながらに。