【呪術廻戦】雨を乞う。⑤【男主】 (ページ4)

今日:10 hit、昨日:12 hit、合計:10,524 hit

再度ページ4

そうして、その日丸一日を使って彼を捜したが、案の定見つからず。

まだウィーンに留まるなら、毎日ホテルというわけにも行かない、と宿泊場所に迷う。
暮れてきた日を見つめて、苦笑していれば。

そのタイミングで携帯が振動した。

「Hallo. Bist du nun in deinem Zimmer? Ich möchte etwas Zeit. (やあ。今自分の部屋に居る？少し時間が欲しいんだけど。)」

電話に出れば、かけてきたのはアーベルさんだった。
何か話したいことがあるようで、時間があるかと問われる。

それに対して、今はウィーンに留まっていて、もう少しはこちらにいるつもりだけど、泊まる場所がないと素直に打ち明けた。

『Wenn es jeden Tag ist, ist ein Aufenthalt in einem Hotel keine gute Idee. (毎日ホテルに泊まるというのは、得策ではありませんし。)』

値段がつり上がってしまうだろうし、何より落ち着けなさそうだ。
苦笑してそんな話をすれば、話を聞いていたアーベルさんはしれっととんでもないことを言う。

それなら、私の家においで。
三食提供するし、代わりに何かを求めたりもしないよ。

「Ich begrüße Sie. (歓迎する。)」

楽しそうにそう言った彼は、とりあえずヴァイオリン教室においで、車で迎えに行く。と言って電話を切る。

断る間もなくそう決められてしまえば、無視することもできず。

仕方なく教室に向かいながら、本当にいいのだろうかと頭を悩ませた。
彼にメリットなんて何もないはずなのに。

迷惑になってしまわないか心配しつつも、歩を進めるのだった。