【呪術廻戦】雨を乞う。⑤【男主】 (ページ22)

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解放② ページ22

no side

『覚えてるなら、なんで、…そんなにやつれているんだ？』

Aは内心心配しながらも、そんな姿は表には一切出さず、淡々と問いかけた。
図星のように痛いところを突かれて、傑の笑みが少し崩れる。

「やつれてなんていないさ。」

ただの夏バテだ、と傑は誤魔化す。
それが噓だなんてこと、瞬時に理解したAは、鋭く目を細めて言葉を重ねる。

『嘘だな。』

敢えて、言葉にしてはっきりと否定することによって、その心を少しでも揺さぶろうとAは強引な手段を取る。

そうなのか、と流すこともできたし、嘘だというにしても、もっと優しい言い方がある。
それをあえて、強く否定することで、傑は多少なりともたじろいだ。

「…どうしてそう思うんだい？」

あくまでも笑顔で、傑は問い返した。

内心、酷く焦りながら。
悟には気づかれなかったのに。いや、…悟は気遣って聞かなかっただけかな。

そんなことが頭をよぎりながら、誤魔化しの言葉を続けようと、逃れようと必死に思考する傑。
そんな考えを、一瞬でぶった切るひと言を、Aは言う。

”『じゃあ、別に取り込まなくてもいいんじゃね。』”

あの日、二人で任務に行った日に、言った言葉と全く同じものを。

驚いて目を見開く傑。
彼がそこまで細かくあの日のことを覚えているなんて、思ってもいなかったのだ、もうだいぶ前のことなんだから。

己は、忘れるわけが。忘れられるわけがない、優しい言葉だったから、刻み付けられていたが。

『悟は最強に成った。』

だからって、オマエまで同じプレッシャーを背負うのは違う。
今は単独任務が増えたんだろ。上層部が最強に容赦するわけないもんな。

淡々と言葉を紡ぐAの指摘は的確だった。

単独任務が増えて、蛆のように湧き出る呪霊を祓っては、無理をして取り込んできた。
今までも。明日からも。
傑は俯く。