【HQ】専属パシリ【宮兄弟】 (ページ1)

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1パシリ。ページ1

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《傍若無人》という言葉を知っていますか？

傍若無人とは、人のことなどまるで気にかけず、遊び、騒いで勝手に振る舞うこと。また、そのさま。

その言葉に驚く程に当てはまる人物を私は知っている。

「なあなあ、疲れてんけどちょっとジュース買ってきてや。えー金？？部活頑張ったから奢って!!」

「はぁ？なんでオレンジジュースやねん。フツー炭酸やろボケ。センス、オカンの胃袋ん中置いてきたんか」

彼の名前は宮侑。彼を一言で表すなら《傍若無人なお坊ちゃん》である。

『ごめんって、嫌なら私飲むよ』

「待て待て、もうコレは俺のや!! しゃあないから飲んだる」

『ごめん、侑くん』

「もうええわ、はよ教室戻れや」

『うん』と返事をして教室に帰る。席に座れば、もう一人の侑くんがニヤニヤしながら私を見た。

「またツムのパシリか？」

『言い方悪いよ』

「よう飽きんなあ」

もう一人の侑くん、もとい治はわざと感心したような声を出した。こういう時の治は８割がた私をバカにしているのだと知っている。

「犬やなイヌ」

『うるさい』

治のデコをパチンと指ではじく。彼は顔を歪めておでこをさすり、私を軽く睨んだ。

「同じ顔やのになんで俺には厳しいねん」

『同じ顔だから？』

治くんは訳が分からないと首を傾げる。そんな彼を尻目に、私は一限目の用意を始めた。

「気を付け、礼、ありがとうございましたー」

四限目の授業が終了した。私はすぐに立ち上がり、購買へ向かう。

ああ、最悪。授業が少し長引いたせいで既に5m程の列が出来ており、ため息をつく。

「……遅い!!」

『ごめん、侑くん』

「しかもなんでメロンパンなん？ほんまセンス無いなオマエ」

『それしか無かったの』

「ツム、文句言うなら俺貰うで？」

「オマエは黙っとけサム」

侑くんはイライラを隠す様子も見せず、私が買ってきたメロンパンをグーで潰した。治がメロンパンの気持ちを代弁するように「グエッ」と声を出す。

「俺こんなんに金出したくないねんけど」

『いいよ、私食べる』

「当たり前やん。ってか、そんなんしてるから太るんちゃう？」

相変わらずトゲの鋭い侑くんの言葉が刺さらないように、身を細くして聞き流す。

『じゃあ、私行くね』

侑くんによって潰されたメロンパンを持ち上げる。ああ、可哀想に。まるで私みたいだな、なんて思った。

_______私は、《宮侑》のパシリだ。