ゆめとまぼろし*3ns* (ページ5)

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爪紅*ぺちゃんこページ5

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爪に色をのせたって、貴方は気付いてくれないのかも。

事細かに何が変わったねって言わなくてもいい
私を見て、私に興味を持って欲しかった。

「ちょっとA」

「なに？」

「塗るのヘタすぎ。見てるこっちがモヤっとするわ。貸してみ」

ネイビーのネイル。
この色にしたのだって理由なんて無い

光の加減で黒にも見えるこれは、私の短く切り揃えた爪を心と同じような孤独で表すのにちょうど良かっただけで。

「珍しいね。ぺーさんがそんな事言うの」

「ん、まあ」

そうやってはぐらかして。

この人が何を思ってるかなんて私には一生分かりっこないの。

今そっと触れてくれてる指先だっていつか私から遠いものになる
ぺーさんの優しさを、私は素直に受け取る事が出来ないから。

「Aさぁ」

「なに」

最後の爪にそれは丁寧にハケを滑らせて
ふぅ、と息を吹きかけられる

少し伸びた前髪と、レンズの厚い眼鏡から覗く瞳に見つめられる

「何をまた悩んでんのか知らないけど」

ねぇそのピアスは誰の為にあけたもの？

「俺、ちゃんとAが好きだから。
お前の事だから色々考え込むだろうけど」

私が好きなら証明をちょうだい。
私だけを好きでいる証明を、

「俺はずっとお前といたいと思ってるよ。
…だから、泣くなよ。」

爪を滑っていたネイビーのハケは、私の薬指をぐるっと塗った。

そんな約束を、私が信用すると思ってるなんて、
本当にひどいひと。

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