年下彼氏〜苦くて甘い珈琲物語 (ページ8)

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演奏が終わり、青年が手を止めて、一息ついてから顔をあげる。

青年「…ふぅっ。………え？」

泣きじゃくる私の姿が視界に入ってしまったのだろう。

こっちを見ないで。

A「…すみません。」

恥ずかしさと申し訳なさと、何よりも自分でも意味不明の涙と状況に混乱しながら、慌ててにげた。

青年「え？ちょ！え！あ、え！！」

戸惑う彼から、人生最高速度のダッシュで、とにかく走った。

とにかく必死だったから、駅までめちゃくちゃ遠回りだったし、自分でもよく覚えていないけど。

その後、家に着いて、やっと心が落ち着いたのは、全てを終えて、ベッドに潜り込んだ時だった。

結局、あの曲はなんて曲なんだろう？

カバー曲なのかな？

それともまさかオリジナル曲？

すごく心に響く歌詞だった。

あの人は何者なんだろう？

何歳なんだろう？

どこに住んでいるんだろう？

また、あそこで歌うかな？

また、会えるのかな？

会えるなら…

涙で視界の半分以上は塞がれていたけど、でも、演奏が終わった時に見た顔は、歌声によく似合う優しい顔だった。

そんなことを考えていたら、いつのまにか夢の中にいた。

優しくて暖かくて、なんだか懐かしくて、心地よい夢だった。