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カチャッ
「すみません、お待たせいたしました。」
「あっ…いえ…」
面会室に入ると、涼介くんに良く似た30代後半ごろの綺麗な女性が待っていた。
目の下には何重にもクマが出来ており、随分疲れ切った様子だ。
普段なら綺麗にまとめられているであろう髪も乱雑に結ばれており、染髪したのは随分前なのか黒髪部分がだいぶ伸びきってしまっている。
マスコミからの取材疲れなのか
はたまた涼介くんについての心労から来るものなのだろうか。
「あ、紹介が遅れてしまいすみません。
彼が今涼介くんと生活してくれている八 乙 女 光です。」
「どうも、八 乙 女 光と申します。」
「いえ、あの子がお世話になっております…。」
「彼は僕の同僚で、普段から被害者の方たちのサポート等も行ってくれているんです。」
挨拶をしてくれたものの、涼介くんと同様、母親も目を伏せており、一切目を合わせようとしない。
そして涼介くんのことを名前で呼ばずに
“あの子”と呼ぶなんて──。
「あの…今日はあの子の荷物を持ってきただけなので…」
「あ…そうですか…」
「すみません。
これから病院に行くので…失礼します」
荷物を突き放すように薮に渡すと、そそくさと部屋から逃げるようにして去ろうとした。
きっと涼介くんを警察に預けた時も
このような形で引き渡したんだろうと思ったら
途轍もなく寂しい気持ちに苛まれた。
「あっ、あの!!」
「…なんですか?」
怪訝そうな顔で振り返る。
「涼介くんの様子とか…聞かなくてもいいんですか?」
「…今はあなたの所にいらっしゃるんですよね?
それであれば、問題ないです」
「いや、そうじゃなくて──
「今は!!!
あの子のことなんて、考えたくないんです!!!
…一体…どんな目であの子のことを見たら良いのか…あなたに分かりますか!?
大事な子どもが!
知らない奴に穢されてしまったこの気持ちが。
…もう、あの子なんて自分の息子だなんて思えない…。
こんなことならいっそ──」
「……。」
「っ失礼します!」
走り去るようにして母親は面会室を後にすると、
残された俺たちの間には静寂した空気だけが残されていた。
「分かる訳ねぇーじゃん。
…帰って来てくれなかったんだから…。」
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あーこん(プロフ) - chamu_yaoさん» 私の不注意のせいです…ご心配頂き、ありがとうございます! でも皆様のおかげで着実に上がってきているので、完結するまでにはもっと高評価になっていますように…>< これからも応援よろしくお願いします! (2019年1月8日 1時) (レス) id: 9b77d17c72 (このIDを非表示/違反報告)
あーこん(プロフ) - chamu_yaoさん» コメント頂きまして、ありがとうございます!繊細で脆くて…そんな2人の葛藤を書きたくて、今回はひかやまに決めました! 低評価なのは、いたずらではなく、初投稿の際にオリジナルフラグをうっかり外し忘れており…このような形に。 (2019年1月8日 1時) (レス) id: 9b77d17c72 (このIDを非表示/違反報告)
あーこん(プロフ) - Leafさん» コメント頂きまして、ありがとうございます!その言葉が励みになってます。これから鬱な展開になっていくと思いますが、変わらず応援して頂けると嬉しいです。よろしくお願いします^ ^ (2019年1月8日 1時) (レス) id: 9b77d17c72 (このIDを非表示/違反報告)
chamu_yao(プロフ) - 悪戯でしたらとても許せません( ´・ω・`)私はこの小説が大好きです。あーこさん頑張ってください!これからも応援しています!!(*´▽`*) (2019年1月6日 21時) (レス) id: dc7fcc81f5 (このIDを非表示/違反報告)
chamu_yao(プロフ) - あーこさんの作品いつも楽しみにさせてもらってます。ひかやま...すき.......と思いながら読んでます。闇のある感じとても素敵です(?)何故こんなにも低評価が押されてるのでしょうか?票とお気に入り追加のあれがおかしい気がします(~_~;)誰かの悪戯なのでしょうか、 (2019年1月6日 21時) (レス) id: dc7fcc81f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーこん | 作成日時:2019年1月4日 1時