第13話 ページ13
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練習が終わって、学校を出る頃には6時半を過ぎていた。
校門を出て先輩たちと別れて歩き出す。
でも、いつも侑李先輩たちと一緒に帰っていく涼介先輩が今日はなぜか私と同じ方向に歩き出した。
「あれ、先輩向こうじゃないんですか」
「あぁ、いつもはどうせ親帰って来るの遅いから知念のとこよって時間潰してから帰るんだけど、今日は...」
そこまで言って涼介先輩は言葉を詰まらせる。
「今日は?何かあるんですか」
「まぁなんでもいいだろ」
ぶっきらぼうに言って歩くスピードを少し速めた。
あれ、私怒らせてしまったかな...
一瞬不安になったけどそれは気のせいだったようで、涼介先輩は速めたスピードを私に合わせてまた落としてくれた。
先輩のそんな気遣いを嬉しく思いながら、私たちは2人並んで歩く。会話こそないけれど、それだけで私はすごく穏やかな気持ちになれた。
しばらく進んだところで先輩が足を止めた。
「俺コンビニ寄ってくけど、お前はどうする」
聞いてくれるってことは、まだ一緒に帰ってもいいってことだよね。
「私は特に欲しい物もないので、外で待ってます」
「分かった」
そう言って先輩は店内に入っていった。
3分ほどして先輩が店から出てきた。
「はい」
すると突然、手にふたつ持っていたアーモンドチョコの箱のひとつを私に差し出す。
「えっ、」
「ひとつやる」
「あ、ありがとうございます」
突然のことに驚きながらも、チョコレートを受け取る。
「あの、どうしてこれ...」
私が不思議そうに尋ねると、涼介先輩はいつもの不機嫌そうな顔になって横を向いてしまう。
「お前、練習中ずっと辛気臭い顔してるし...こっちが気になって練習に集中出来ねぇだろ」
「すみません...」
「だから、まぁ、甘いもんでも食ってスッキリしたらと思って...」
涼介先輩、私のこと心配してくれてたんだ。
「心配してくださってありがとうございます」
私は、涼介先輩に心からのお礼を言った。
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kurodaamane(プロフ) - おおおおおお面白い😍🧡(●'◡'●)あなたの心にもみあげ手裏剣 (2022年3月29日 2時) (レス) @page16 id: 2adfc9a228 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさとわ | 作成日時:2020年4月15日 23時