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「ソクジナー、一緒に行こうぜ」
「あ、うん。ユリ先輩、それじゃ」
ソクジン君は俺とばかり一緒にいるから、友達がいないんじゃないかと思っていたが、そんなことは無いらしい。
同じ高校の同級生が何人か一緒に入学していたようで、その男子達はソクジン君が俺とつるんでいても、変わらずに仲良くしてくれてるようだった。
「化粧でも直すか……」
ソクジン君は次のコマも講義があるが、俺はこの後空いてるので1人で過ごさなくてはならない。
いつも1人でいるのが当たり前だったのに、ここ最近ソクジン君がずっと一緒にいるから少し不思議な気持ちだった。
「よお、キム・ユリ。ちょっと、ツラ貸せよ」
「……………」
化粧を直しにトイレに行こうと席を立ったところで、知らない男たちに急に声を掛けられた。
ああ、出たよ。最近こういうの無かったんだけどなあと、他人事のように思う。
無視しようと思ったがわざわざ行く手を塞ぐみたいに囲まれてしまったから、ため息をつきながら分かったと答えた。
□
「ったく、なんで男なのに女みたいな格好してんだよ。名前も女みたいだし、ホントに気持ち悪ぃな」
「その格好であの新入生のイケメン君誑かして楽しいか?」
「ちょっと、胸ぐら掴むのやめてくれない?この服高いんだけど、君達に弁償できるの?」
わざわざ遠くまで歩かされて連れてこられたのは、ほとんど使われていない撮影道具が保管された倉庫だった。
壁に思い切り突き飛ばされたあと、乱暴に胸倉を掴まれて思わず眉間にシワが寄る。
「そもそもなんで君達が私に突っかかってくるの?女の子が来るなら分かるけど……。あっ、もしかしてさっきの子の元カレで、腹いせしてって頼まれたとか?」
「っ、こいつ、どういう状況が分かってねえみてえだな」
「図星かあ、可哀想。私が代わりに付き合ってあげようか?あの子より私の方が全然可愛いと思うけど」
「っ、てめぇ!!」
胸ぐらを掴んだ男が拳を握り締めると思い切り振りかぶってきた。
いや!!俺の顔殴ろうとするとかこいつ正気か!?
なんとか顔のダメージだけは避けたくて、ぎゅっと目をつぶって咄嗟に腕を顔の前に出した。
でも、やってくるはずの衝撃や痛みがいつまでもやってこない。
恐る恐る目を開けたら、背の高い男の背中が目に入ってきた。
まさか、と思い視線を上に向けると、そこにいたのはソクジン君だった。
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作者名：萩焼 | 作成日時：2022年10月2日 21時
