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「あっ 」
「え?」
ぼーっとジナの顔を見ながら歩いていたら、急にジナがあっ、と言って立ち止まった。
ジナが視線を向けている方を俺も見てみれば、道路を挟んだ反対側に小さなゲームセンターがあった。
外に出ている2台のUFOキャッチャーのうち、1つにジナの家にあったピンクのキャラクター……ピンクビーンの小さなぬいぐるみが入っていた。
「欲しいの?」
「え?」
「あれ。えっと……ピンクビーンってやつ」
「え!?い、いや、欲しくないよ!!全然!!」
ジナはブンブンと首を横に振っているが、家に置いてあったグッズの量や今見つめていた目から、明らかに欲しそうだったのは丸わかりだった。
「あっ、待って!!どこ行くの!?」
信号が青になった瞬間、横断歩道を渡った。
俺の後ろをジナが慌ててついてくる。
向かったのはもちろんゲームセンターだ。
「ユリ?どうしたの?」
「まあ見てろって」
店の前に出ていたUFOキャッチャーの前に立つ。
鞄から財布を取り出して、500ウォンを機械に入れる。
軽快なメロディと共に、クレーンを動かすためのボタンが光る。
まずはボタンをすぐに押さず、よく観察する。
こういうのは大体取れやすそうな箇所があったりするから、むやみやたらに始めてはいけない。
「この辺かな……」
狙ったのはぬいぐるみについているタグの輪っか。
小さいがいい感じに引っ掛けられそうなのがあったので、それに狙いを定めて動かしてみた。
「うわあ!?嘘!?」
アームの爪は俺の狙った通りにタグにひっかかってくれて、上手いこと持ち上がった。
ジナが驚いたのはそれだけじゃなくて、反対側の爪にも奇跡的にぬいぐるみがひっかかっていたからだ。
アームは2個のぬいぐるみを持ち上げて、穴まで移動した。
「ユリ、すごい!!2個同時にとる人、僕初めて見たよ!!」
「ふふん、どうだ。上手いだろ?」
「本当に上手い!!上手!!」
俺も2個取れるとは思ってなかったが、ジナがすごいすごいと褒めてくれるから気分が良かった。
機械の中からぬいぐるみを取り出したあと、はいとジナにそれを差し出した。
「え?くれるの?」
「うん。俺、別にこのキャラそんな知らないし」
「じゃあなんでやったの?」
「なんでって……ジナ、これ欲しかったんだろ?」
さっきは全力で否定していたけどと付け加えると、ジナは面白いくらい視線を泳がせた。
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作者名:萩焼 | 作成日時:2022年10月2日 21時