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入学した日に、女友達のサークルのビラ配りを手伝っていたのだが、至る所でとんでもないイケメンがいると話題になっていたのがこの男だ。

確かに憎たらしいくらいかっこいいし、俺が喉から手が出るほど欲しい身長もある。
最初声を掛けられた時は俺をバカにしに来たのかと思ったが、全くそんなことはなかった。

普通に声をかけてきて、普通に会話して、講義で分からないところを質問してくる真面目な後輩だった。

「ああ、ようやく理解できた!やっぱりユリ先輩は頭いいですね。助かりました」
「あの教授、ちょっと分かりにくいけど質問しに行ったらちゃんと説明してくれるし、地味にそういうの評価の考慮に入れてくれてるから、次から教授に質問した方がいいよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」

ニコニコと屈託なく微笑まれると、どうしていいか分からなくなる。
こいつ、本当に俺が男だって分かってるんだろうか。
それともそんなの噂で本当は女だと思ってて、だからこんな優しくしてくれてるのだろうか。

「ユリ先輩、この後は?」
「普通にお昼食べて四限出ようと思ってるけど」
「よかったら一緒にお昼どうですか?僕も四限まで空いてるんです」
「う、うん。いいけど」

1、2限ぶっ通しの講義の後は脳みそを使うからさすがに腹が減る。
いつもは昼は抑え目にしていて、キャベツのサラダとコンビニのプロテインしか食べたなかったりするのだが、今日は5限まで講義が入ってるからちゃんと食べないともたない。
ソクジン君に昼を誘われて、断る理由もなかったので了承してしまった。

「うーん、何がいいかな……」

食券の販売機でうーんと悩むソクジン。その姿を遠目から見てる女たちがきゃあきゃあ騒いでることに、こいつは気がついてないんだろう。

「ユリ先輩は何にするか決めました?」
「いつも蕎麦しか食べないって決めてる」
「え、なんでですか?」
「この中で炭水化物の割合が1番低いから。あと単純に安い」
「へえ、そうなんだ!!ユリ先輩って物知りですね」
「メニュー表に書いてあるから。アレルギーとかも書いてあるからちゃんと選んだ方がいいよ」
「本当だ。ありがとうございます」

ソクジン君は結局悩んだ末、俺と同じ蕎麦にしたらしい。
でかい身長しててこれしか食べないなんて絶対お腹減るだろうに、と思ってたら食堂のおばちゃんからおにぎりをサービスされているのを見てちょっとだけ安心した。

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作者名:萩焼 | 作成日時:2022年10月2日 21時

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