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「う、売り切れ……」
ジナと受けた3限目には雨は降ってなかったが、次の4限目の途中で室内にいるのに雨音が聞こえてくるくらいの大雨が降り始めていた。
講義が終わって速攻で購買部に走っていったのだが、無惨にも「傘は売り切れました」の紙が傘売場に貼り付けられていた。
うわあ、まじか。一本くらい売れ残ってるかなってちょっとだけ期待してたんだけどな。
これは濡れて帰るしかないか、と覚悟を決めるが思わずため息が漏れる。
「ユリ!!見つけた!!」
「えっ」
購買部の前を後にしようとしたら、急に名前を呼ばれた。
聞き覚えのある声にすぐに視線を向けたら、何故か帰っているはずのジナが立っていた。
「ジナ!?お前帰ったんじゃないの?」
「ユリが傘ないって言ってたから心配で」
「お、俺の事心配でわざわざ残ってたの?」
「本当は傘を買ってユリに渡そうと思って待ってたんだけど、僕が来た時にはもう売り切れてて……ごめんね」
心配してくれてたこともそうだが、わざわざ傘を買っておこうと考えてくれていたことも驚いた。
え?なんだこの後輩。本当に出来すぎてる。
「謝らなくていいよ。というかそんな気遣ってくれなくてもいいのに」
「僕がしたかっただけだから気にしないで」
なんてことないように笑いながら言うジナを見て、俺は本当に感動してしまった。
「にしても雨止みそうにないな……」
「ユリって家近いんだっけ?」
「歩いて20分くらい」
「なら送ってくよ」
「え?」
ジナはまたもなんてことないように、さらっとそんなことを言ってのけた。
送ってくって、こんな大雨の中を?
いくら俺の背が小さいからって、ジナが持っている傘に2人の人間が入るのには些か小さい気がする。
「いや!!それはマジで悪いからいいって!!お前絶対濡れるぞ!?」
「少しくらい平気だよ。ほら、もっと強くなるかもしれないし、早く帰ろう」
そう言ってジナが走って大学の門まで向かっていくものだから、俺も慌ててその後をついて行った。
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作者名：萩焼 | 作成日時：2022年10月2日 21時
