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「はー、本当に疲れた。ジナ、講義抜け出してくれたんだよな?大丈夫?」
「毎日出席してるし、1回くらいサボっても大丈夫」
「そっか。じゃあちょっと早いけど飯でも食べに行く?お詫びも兼ねて奢るよ」
「いいの!?」
「いいよ。逆に学食で申し訳ないけど」
そう言うと、ジナはなんでも嬉しいですよなんて気が利く一言を言ってくれた。
世の中の後輩ってこんなにできたものなのか?
それともジナができてるのか?……多分、後者なんだろうな。
「他に何かあったら言って。奢るくらいじゃ今回の件の埋め合わせできないし」
「そんな、気にしないで。結局ユリが自分で解決したし、僕は何もしてないから」
「ダメ。俺の気が済まない」
ジナが来てくれなかったら、おそらく俺は顔面を殴られてただろうし、その後ボコボコにされていた可能性だってある。
あのタイミングで来てくれたから、無傷で済んだし、上手いことあいつらを対処できた。
本当になんでも言ってと言えば、少し考え込んだ表情を浮かべたあと、ジナは「そ、それじゃあお願いがあるんだけど……」と口を開いた。
「その、僕と2人でいる時は、普通の声で話してほしいなって……」
「……ん?」
ジナに言われた言葉を理解するのに少しだけ時間がかかった。
普通の声というのは、女の声じゃなくて男の声でってことだろうか。
すっかり忘れていたが、さっきジナを止める際に叫んだ時から、今までずっと本来の男の声で喋ってしまっている。
念の為ジナに普通の声って今の声?と確認したらそうですと頷かれた。
「え?この見た目で声だけ男なのキモくない?」
「全然キモくないです!!むしろ、」
「むしろ?」
「あ、いや……。と、とにかく、ユリさえ嫌じゃなければそうして欲しいなって……」
ジナは遠慮がちに駄目ですか?と聞いてきた。
俺的には全然駄目じゃないし、むしろ助かる。
もう慣れて習得した技とはいえ、女の声を出すのは喉にまあまあ負担がかかる。
前までずっと1人で過ごしているから、話しかけられることが無ければ喋らずにすんでたけど、ジナといるようになって喋ることが増えたし、ジナからそう言ってもらえるのはありがたかった。
「じゃあジナと2人の時は女の声やめるわ」
「うん、ありがとう」
またジナは嬉しそうな顔をしてはにかんでいた。
本当に気持ち悪いとか思ってないんだろうなと思うと、不思議に思うと同時にこんな風に親しくしてくれる同性が今までいなかったから、なんだか嬉しかった。
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作者名：萩焼 | 作成日時：2022年10月2日 21時
