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「………はあ、なんとかなった」
どうにか暴力沙汰を回避出来たことに酷く安心して、どっと疲れてしまった。
座り込みたい気分だったが、倉庫が古すぎて床に座るとホコリがつきそうだったから我慢した。
「ソクジン君、本当に巻き込んでごめん。大丈夫?」
「………ソクジナ」
「え?」
「さっき、ソクジナって呼んでくれましたよね?」
「えっ、ああ。ごめん。必死だったからつい呼び捨てして……馴れ馴れしかったよな?」
「そんなことないです!!むしろ嬉しかったです!!良かったら今後もそう呼んでくれると、嬉しい、です……」
ソクジン君がすごい勢いで話し始めたと思ったら、後半に連れて顔の赤さが増すと共に言葉が途切れ途切れになって、最後の方はかなり小声だった。
「じゃあ、ジナって呼んでいい?短い方が呼びやすいから」
「っはい!!ぜひ!!」
「……そんなに嬉しい?」
「う、嬉しいです」
こんな事に巻き込んでしまったから、普段優しいソクジン君でも文句くらい言うだろうと思っていたのに、そんなこと言う雰囲気はどこにもない。
俺に名前を呼ばれただけで、キラキラと目を輝かせている。
……なんか、可愛いな。
「じゃあジナも俺の事ユリって呼んでよ」
「え!?よ、呼び捨てですか?」
「呼びたくないなら全然今まで通りでいいんだけど」
「そ、そうじゃなくて!!と、年上なのに呼び捨てにするのは……」
「さっきは年上ぶっちゃったけど、そういうの俺気にしないし。……それに、同性の友達ってあんまできたことなくて。ジナさえ良ければ、同い年の友達みたいに接して欲しいなって。……嫌?」
男友達がいた記憶があるのが小学生の時しかないのが本当に笑える。
中学は告白した事件によって虐められ、高校では授業以外で周りから話しかけられることもなくて、こんな風に素をさらけだすような人は誰もいなかった。
だから俺が年上だとしても、ジナには呼び捨てで呼んで欲しかった。
「わ、分かりました。あ、いや、分かった。が、頑張ってゆ、ユリって呼ぶね!!」
「頑張るくらいなら全然普通に呼んでもらってもいいんだけど……」
明らかに抵抗があるようなのに、ジナは大丈夫、頑張るの一点張りだった。
名前呼ぶだけで頑張るってなんだよ、と少し笑ってしまったのだが、嫌じゃ無いならいいかと思うことにした。
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作者名:萩焼 | 作成日時:2022年10月2日 21時