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「……この辺か?」
ジナの友達から教えてもらった住所をマップのアプリで検索すると、大学からはバスを使って行かないといけないようだった。
あいつ、俺の家から近いとか言ってたのに方向真逆だし、歩いていくにはちょっと遠すぎるのに、なんであんな嘘ついたんだろう。
これじゃあ余計に風邪をひくに決まっている。
バス停を降りてから画面の表示に従って歩いていると、どことなく金持ちな人が住んでそうな高級住宅街へと入っていった。
目的地は周辺ですの文字が出て、辺りを見回すと塀が高く立派な門扉を構えた一軒家が目に入った。
「ま、まさかこの家……?」
表札の下に書かれた住所を見ると、ジナの友達が教えてくれた住所と一致した。
うわ、まじ?こんな家ドラマでしかみたことねえんだけど。
「あの、うちに何か用ですか?」
「うわあっ!」
インターホンを押そうとしたところ、急に後ろから声を掛けられた。
思わず男の声が出てしまって慌てて口を塞いで、恐る恐る後ろを振り返った。
そこには1人の男性が立っていて、俺を見るなりに驚いたように目を見開いていた。
「す、すみません!!あの、私ソクジン君と同じ大学に通ってる者でして、ソクジン君が体調崩したって聞いて、お見舞いに来たんですけど……」
「…………」
「あ、あの……?」
不審者だと思われたかと思って必死に弁明したのだが、なんの反応もない。
どうしようかとまた言葉を考え始めたところで、肩を軽く叩かれた。
「いやー初めまして!!俺はソクジンの兄のソクジュンです!!わざわざお見舞いなんてありがとうございます。どうぞどうぞ、今鍵開けますから」
「あっ、ありがとうございます」
朗らかな笑顔は確かにジナと似ているところがある。背も高いし、人当たりもいい。
ジナにお兄さんがいるなんて知らなかった。
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作者名:萩焼 | 作成日時:2022年10月2日 21時