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「さあ、今日はどうしようかな…」
鏡の前に並べられたメイク道具。
下地、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー……他にも数え切れないくらい沢山の種類のものが目の前に並んでいる。
「今日は雨か……。ちょっと気分上がるようにメイクするか」
その日の自分の気分だったり、ファンションに合わせてメイクをするのはとても楽しい。
そして何より、自分に自信を持てるようになる。
冴えない自分が、メイクをすることでまるで生まれ変わったかのように別人に変身できるのだ。
「うーん。今日も完璧だ」
1時間以上かかって出来た自分の顔を見て、満足する。
雨の日の憂鬱さを晴らすように、アイシャドウは可愛らしい淡いピンク色をベースにして、ラメを多めのものを選んでみた。
可愛い雰囲気にしたかったから、アイラインはちょっとタレ目に見えるように下げ気味に。
リップもアイシャドウに合うようにピンク系のティントで仕上げた。
「さてと、服と髪の毛どうすっかな…」
クローゼットにの並んだ可愛らしい洋服たちとカラフルなヘアウィッグ達を見て、メイクのテイストに合わせて慎重に選んでいく。
ウィッグはミルクティブラウンのロングヘアで、毛先を少しだけカールさせた。
服はちょっと袖が長い大きめの白いトレーナーに、ピンクのチェック柄で膝上のプリーツスカート、ショート丈の靴下はピンクのハートのワンポイントが入っている。
これに白いスニーカーを履けば…うん、完璧だろう。
「あー、今日も最高に可愛いな」
鏡に映る自分はどこをどうみても可愛らしい美少女にしか見えない。
少女と言うには成人をしているので些か疑問があるかもしれないか、細かいことは気にしない。
可愛いことが何よりも重要なのである。
「やべっ、もう家でねえと一限遅れる」
時計を見てそろそろ家を出ないとまずいと、慌てて鞄を手に取って家を出る。
そんなに気合を入れて今からどこに行くのかって?デート?
いやいや、違う違う。
今から大学に講義を受けに行くのだ。
傘を指して大学に向かう途中、知らない男に突然声をかけられた。
ああ、たぶんまたあれだろうなと思ったら、案の定名刺を差し出された。
「あの、すみません。こういう者なんですが、アイドルに興味ないですか?」
「あ、すみません。俺男なんでヨジャドルは無理です」
「……はい!?」
俺はキム・ユリ。性別男、年齢21歳。建国大学に通う大学3年生。
趣味は……女装だ。
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作者名：萩焼 | 作成日時：2022年10月2日 21時
