17-6 ページ24
「んー……、A……」
「！」
突然名前を呼ばれ、心臓が跳ねた。起きてる?と思ったが、寝言のようだった。
もしかして、夢の中に俺が登場でもしてるのだろうか?
もしそうならユンギはいったいどんな夢をみてるんだろう。気になったがこれ以上ここにいたら駄目な気がして、ユンギを起こさないようにゆっくりとベッドから起き上がろうと、ユンギに背を向けた時だった。
「A……」
「ッ、」
突然後ろから腰に腕を回され、耳元で名前を呼ばれた。
今度こそ起きたのかと思ったが、耳にかかる息は規則正しく、起きてはいないようだった。
寝ているユンギを他所に、俺の心臓はありえない速さで脈打っている。
ドッドッドッドッという心臓の音が耳のすぐ側でユンギの寝息とともに聞こえてくる。
俺の背中にはぴったりとユンギの体くっついていて、ユンギの鼓動と、いつもより少し高い体温が体で感じられた。
「(なんか、やばい、きがする)」
心臓の速さは収まらないし、ユンギの息が耳にかかる度に何かゾワゾワしたような感覚が背中に走って落ち着かない。
早く離れないといけないのに、腰に回された腕が以外にもがっしりと回されているせいで離れられない。
「ユンギ、起きろ、はなして」
「ぅー……」
「っ、あ」
小声で後ろのユンギに声をかけたら、顔を動かしたせいなのか唇が項に触れた感触があった。
その瞬間、ビクリと自分の体が震えたと同時に、自分から聞いたことの無いような声が漏れ出てしまった。
ヤバいと口を慌てて塞ぐと、ユンギの腕が少しだけ緩んだのですかさず体を動かしてベッドから転がり落ちるように抜け出し、音を立てないようにすぐさまベッドルームを出た。
「はあっ、はあっ…………」
まるでマラソンをした後にみたいに息が上がっていた。ズルズルと扉の前に座り込んだあと、項垂れるように座り込んだ。
ユンギに触れられた項に手を添える。
ほんの一瞬だったのに、唇の感触がいまだに残っている。
「(今のは、完全に、アウトだ)」
完全にアウト。ユンギがじゃなくて、俺がだ。
このドキドキにユンギに対しての嫌悪感とかが含まれてたら良かったのに、そんな感情は微塵もなくて、むしろ―――。
「…………これじゃ、一緒に暮らせないな」
はあ、とため息をひとつついて、スマホで物件サイトを開いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 656人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
萩焼(プロフ) - 楓。さん» 楓。様コメントありがとうございました。面白いと言っていただけて本当に嬉しいです。番外編の連載が始まりましたのでこちらも読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2022年4月17日 16時) (
レス) id: 8f6d7b7d92 (このIDを非表示/違反報告)
萩焼(プロフ) - タピさん» タピ様コメントありがとうございます。R18になりますが続編始まりました。もし良ければこちらも読んでいただけると嬉しいです。 (2022年4月17日 16時) (レス) id: 8f6d7b7d92 (このIDを非表示/違反報告)
タピ - すいません続編出たら教えてください (2022年4月11日 23時) (レス) @page50 id: 19cea763d0 (このIDを非表示/違反報告)
楓。(プロフ) - 完結おめでとうございます！とってもおもしろくて、大好きなお話です！！更新がすごく楽しみで、毎日早く夜にならないかなーと思っていました() 番外編も楽しみにしてます！！素敵なお話をありがとうございました。 (2022年1月27日 0時) (レス) id: eb82cc5865 (このIDを非表示/違反報告)
慈雨 - 完結おめでとうございます！そして素敵なお話をありがとうございました(*^^*)砂糖率高めなユンギとの番外編が今から楽しみです！ (2022年1月25日 23時) (レス) id: 0183a2a79f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：萩焼 | 作成日時：2022年1月16日 12時
