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食後にボドゲはいかが? ページ8

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「ほーら、チェックメイトだ」

クルミが涼しい顔でビショップを移動させると、Aはわなわなと頭を抱えた。盤面上にはほとんど白の駒しかない。これでは勝負というより一方的な蹂躙である。

「あ、あんた人の心とかないんか…。初心者やって言ってんのに…。」

「手加減してやったさ。20ターンは待ったぞ」

ナチュラルに心を抉ってくるクルミ。本当に20ターンも待ってくれたのか定かでは無いが、こうも圧倒されしまっては何も言えない。せめてもの抵抗として「いつかボコボコにしたる」などと小物臭い台詞を吐くも、クルミのドヤ顔は酷くなるばかり。

『3ヶ月に行われる赤西議員の演説ですが───』

棚上の小型テレビから滑舌の良いアナウンサーの声が流れた。Aは視線を向ける。端正な顔立ちの男が記者の質問に答えていた。

「凄い人気ですよね」

「ああ、こういう若者が日本を変えていくんだろうな」

常連客の伊藤が反応すると、これまた常連の阿部が感心した様に頷いた。赤西は斬新な改革やその甘いマスクで最近アイドル的な人気をはくしている若手議員だ。

ところで今はボードゲーム大会の真っ最中。人生ゲームを楽しむ常連2人の手にはオモチャのお金が握られいる。ちょうど結婚のマスに止まったらしくミズキが何やら騒いでいた。

「熱心に見てるな。タイプなのか?」

ニヤつきながらクルミが尋ねた。Aはすぐに否定しようとしたが、口を開く前に「そうなの!?」とうるさいのが割って入ってくる。

「なるほど、確かにハンサムだけど。なるほどなぁ」

ふむ、と顎に手を当てた千束が品定めするみたいな目で赤西に注視し始めると、男の話に目ざといミズキが眼鏡の奥を光らせた。

「玉の輿狙い?」

気付けば伊藤と阿部も注目していた。千束は言わずもがな。たきなはあまり興味が無さそうで、ミカだけは知った顔で微笑んでいる。

「いや、ぜんっぜん。なんか胡散臭いし」

答えると、クルミがチャンネルを変更した。

「同感だな。あの若さで幹事長候補だなんて裏金でもばら撒いてるんじゃないか?」

「偏見が過ぎるでしょ」

「どうだか。顔の良い男は大抵信用できない」

「…あんた婚期逃すわね」

「おー。ミズキが言うと説得力が違うな」

それだけ言って逃げていくクルミ。頬を赤くしたミズキが追いかけていくのを見送ったAは、クスッと笑ってチェスの駒を片付け始めた。

「ミズキの枠が空いたな」ミカが呟くと、瞬時に千束が肩に手を回してくる。

「はい、はーい!千束とAが参加します!」


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RIO(プロフ) - わざわざ返事をして頂き、ありがとう御座います! はいっ、これからも応援します! (~^-^~) (2023年1月10日 22時) (レス) id: 9824f121c1 (このIDを非表示/違反報告)
caramel(プロフ) - RIOさん» コメントありがとうございます!素晴らしいだなんてモチベ爆上がりですっ!不定期更新になると思いますが、良ければこれからもお付き合いください☻ (2023年1月10日 20時) (レス) @page14 id: 5ce05d887a (このIDを非表示/違反報告)
RIO(プロフ) - 初コメント失礼します!リコリコ探していたら丁度、気になる作品名があり拝見させて頂きました。素晴らしい小説だなっ!と思いました。続きを頑張ってください!( ' - ' >) (2023年1月10日 14時) (レス) @page13 id: 9824f121c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:caramel | 作成日時:2022年11月26日 10時

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