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限りある今に最大規模の祝福を ページ14

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トーク画面の背景変更が出来ない若者が現代社会に存在するなんて!千束は呆れた。言われてみればロック画面もホーム画面も初期設定のまま変更されていない。入ってるアプリは常備のものと必要最低限の連絡用だけ。これじゃあスマホ初心者のご婦人と同じかそれ以外だ。

「ん…えっと、千束?写真開いたけど」

「あぁ、違う違う。アプリから開くの」

腹を満たした2人は鰻屋の近場、墨田公園の木陰に休憩がてら座っていた。側からみれば女子2人が調べ物でも検索している仲むずまじい光景だが、その実はスマホ介護。千束は携帯ショップの販売店員にでもなった気分だ。

「これ?…あー!これか。…あれ?ん?…なぁ千束!見て!このスタンプめっちゃ可愛い!」

Aの指先で犬らしきキャラクターが動いている。声が出るタイプだ。確かに可愛い、だけどそうじゃない。何があったら背景の設定からスタンプ購入に変わるのか千束には分からない。今分かるのは1つだけ。スマホに遊ばれているAの方がスタンプなんかよりよっぽど可愛い。たきなしかり、千束は顔の良い女に弱かった。

「そいつは後で買おう。とりあえず背景変更ね。貸してみ。…この歯車マークの所からデザインに移動して──」

正直なところ四苦八苦するAをずっと見ていたかったのだが、このままじゃ明日になりそうなのでスマホを拝借して実演してみせる。説明する度にいちいち感心するAに悶えながら写真フォルダを開いた時、千束の手が止まった。

「可愛い〜!これA?」

フォルダの一番上に表示された写真。小さな女の子の肩に、体格の良い中年の男が手を乗せて微笑んでいる。

「うん。DA入ってすぐのやつ。それだけ保存してもらっててさ。隣の人が私の指導者(メンター)。千束でいうミカさん」

「まじ!?めちゃくちゃ武闘派の身体付きなんだけど」千束はクスクス笑う。「今も大阪にいるの?」

「さあ、何してんやろな」

「……ん?」

別に指導者の行方を知らない事自体はおかしくないが、どこか寂しそうなAに違和感を抱いた。千束は男について尋ねようと口を開きかけ、寸前で止まる。彼への興味が一瞬にして掻き消された。鼓動を刻んで無いはずの心臓が不愉快に熱い。

「A。このネックレス、誰に貰ったの?」

写真の中の女の子。その首元に、フクロウを模したチャームが引っ掛かっていた。


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RIO(プロフ) - わざわざ返事をして頂き、ありがとう御座います! はいっ、これからも応援します! (~^-^~) (2023年1月10日 22時) (レス) id: 9824f121c1 (このIDを非表示/違反報告)
caramel(プロフ) - RIOさん» コメントありがとうございます!素晴らしいだなんてモチベ爆上がりですっ!不定期更新になると思いますが、良ければこれからもお付き合いください☻ (2023年1月10日 20時) (レス) @page14 id: 5ce05d887a (このIDを非表示/違反報告)
RIO(プロフ) - 初コメント失礼します!リコリコ探していたら丁度、気になる作品名があり拝見させて頂きました。素晴らしい小説だなっ!と思いました。続きを頑張ってください!( ' - ' >) (2023年1月10日 14時) (レス) @page13 id: 9824f121c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:caramel | 作成日時:2022年11月26日 10時

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