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.「お腹が空いたね、どこか近傍の食事処へいこうか」
わたしの少し前を歩きながら太宰さんが言った。ふと、横顔が綺麗だな、と思う。鼻の通りがお父さんや結に似ている。わたしは鼻の綺麗な人を好むのかもしれない、と、新たかつ、微笑ましい発見にくすくすと声を控えながら笑う。
「ふふ、わけはわからないけれど私も嬉しい」
太宰さんも笑った。つられてわたしも笑いが止まらなくなってしまう。その笑いが落ちついた頃には顔全体の筋肉がほどけて、二人見つめ合って、「なんで笑ってたんだっけ」、『忘れました』、そんな会話でもう一度、微笑みあう。
『あ、月』
本屋さんを出て広くなった世界で、大きな空を仰ぐと、そこには白い月が浮かんでいた。
「本当だ」
『これって、昼の月って、言うらしいですよ』
「へぇ、綺麗だね」
『そうですね』
二人とも、呟くように声を出す。月が綺麗、わたしは知っている。アイ、ラブ、ユゥ。
『好きです』
「私も」
何度だって伝える。だってあなたが大好きだから。ただ、大好きだから、愛してる。
こんなわたしたちを、昼の月は宙で眺めている。この世界が終わるまで、考えたくはないけれど、あなたがいなくなってしまう時まで、わたしはあなたを一生懸命に愛そう。
わたしは青空を仰いでもう一度呟いた。
『月が、綺麗ですね』
「昼の月」了
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作者名:うずのしゅげ x他1人 | 作者ホームページ:https://twitter.com/paskfloro
作成日時:2022年1月28日 16時