検索窓
今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:5,974 hit

−3 ページ20

.「お腹が空いたね、どこか近傍の食事処へいこうか」

 わたしの少し前を歩きながら太宰さんが言った。ふと、横顔が綺麗だな、と思う。鼻の通りがお父さんや結に似ている。わたしは鼻の綺麗な人を好むのかもしれない、と、新たかつ、微笑ましい発見にくすくすと声を控えながら笑う。

「ふふ、わけはわからないけれど私も嬉しい」

 太宰さんも笑った。つられてわたしも笑いが止まらなくなってしまう。その笑いが落ちついた頃には顔全体の筋肉がほどけて、二人見つめ合って、「なんで笑ってたんだっけ」、『忘れました』、そんな会話でもう一度、微笑みあう。

『あ、月』

 本屋さんを出て広くなった世界で、大きな空を仰ぐと、そこには白い月が浮かんでいた。

「本当だ」

『これって、昼の月って、言うらしいですよ』

「へぇ、綺麗だね」

『そうですね』

 二人とも、呟くように声を出す。月が綺麗、わたしは知っている。アイ、ラブ、ユゥ。

『好きです』

「私も」

 何度だって伝える。だってあなたが大好きだから。ただ、大好きだから、愛してる。

 こんなわたしたちを、昼の月は宙で眺めている。この世界が終わるまで、考えたくはないけれど、あなたがいなくなってしまう時まで、わたしはあなたを一生懸命に愛そう。

 わたしは青空を仰いでもう一度呟いた。

『月が、綺麗ですね』

「昼の月」了

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)


←−2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (29 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
22人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:うずのしゅげ x他1人 | 作者ホームページ:https://twitter.com/paskfloro  
作成日時:2022年1月28日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。