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...おぶられている。
彼の暖かい背中に頬を擦り付けると、
｢うわっ、何？！ やめろよぉ...｣
と、また大きな声が返ってくる。
若干の申し訳なさと安心感に包まれながら、
私は悪くない気分を堪能していた。
この時間、私だけぼーっとしているのも悪いし、
まだ完全に頭は回らないけど、
ちょっと思い出してみようかな、さっきのこと
...私、なぜ倒れてしまったんだろう。
倒れた理由も、その前までの...
山に着いたあたりからの記憶も思い出せない。
頭にもやがかかっている。
任務に行く前... いや、山への道を歩いているときは、
そんなことなかったのに...
我妻が倒れてから、鬼はどうしたの？
私たち、襲われなかったの？
鬼に襲われたとしたら、体に傷が残っているはずだけど、
彼にも私にも、これといった傷はなかった。
それすなわち……
はあ、帰ったら、どう説明しよう。
鬼がどうなったか分からない。生死が分からない。
まだ死んでいなかったとしたら、
また被害が拡大してしまう。
折角、鬼殺隊として、私たちが派遣されたのに...
己の無力に胸がキュッと苦しくなる。
今すぐにでも山に戻りたかったが、
私がこれ以上思考することを拒むように、
頭にまたしつこく痛みが襲ってきた。
あまりの痛みに、我妻の隊服を握りしめる私。
｢ん？どうしたのAちゃん... あっ、なんか見つけた？
それとも歩くの速すぎた？｣
『...ごめん、我妻、急に、ものすごく... 頭が、痛くて』
｢え？ 大丈夫？ どれくらい痛むの？ 死ぬ？｣
先程までの声色とは一変した声で私を心配する我妻。
背中におぶられているから、見えないけれど、
心配そうに眉を顰める顔が、脳裏にはっきりと浮かんだ。
『ごめん、』
｢寝てていいよ、Aちゃんに倒れられたら、今度こそ俺泣いちゃうしさあ…｣
私が言う前に、我妻は甘やかすような、優しい声で答えた。
我妻だって疲れているはずなのに
『ごめん、すぐ おきる から .....』
「こんどこそ」っつーか、さっきも泣いてただろ、お前。
……まあいい、
屋敷について、頭痛が引いたら、
我妻になにか買ってあげよう。
そんな上から目線な思考が頭に浮かんだのもつかの間、
私はあっという間に深い眠りについた。
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作者名：わ | 作成日時：2023年1月21日 21時
