【HQ】俺の気持ちを受け取ってください【岩泉編ファイナル】 (ページ41)

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「お...おとう...さん？」
「..............」

これが本当に神様のイタズラだったのなら、複雑な気分だ。

あの時の自分に出会えるのなら、殴ってやりたい。

抱きしめてやりたい。

妻と出会い、数十年の時をへて結婚し、子まで授かった。

可愛い我が子だ。

だけど、自分の中に少しだけ罪悪感があった。

本当にちょっとの罪悪感。

コップ一杯ぐらいの、並々に注がれた水が縁から溢れそうなほどの、

何も施しようのない、どうしようもない物。

Aが好きで、忘れられない気持ちだ。

それがいつか、心の隅に隠していたモノが崩壊して心全体へと流れてしまったら、俺はきっと泣き崩れるんだろうと。

俺はそれを一生背負っていかなきゃならない。

俺は家族を守り、幸せにする。

もう、あの時の記憶も感情も思い出さないように....

ずっと、そう思ってきたんだ。

お前と俺が幸せになる道だって、ずっと思っていたんだ....

けど、それも違ったんだな。

「お父さん？....ねぇ、大丈夫？」

不思議そうに見つめる俺に抱きしめていた腕の力を緩めて娘の顔を見つめる。
そして、こうつぶやいた。

「.....その後、俺はこう言ったんだろ？」
「.....へ？」
「俺の気持ちを受け取ってくれてありがとな......」

この言葉をまた言える時がくるなんてな....

「.......Aって」

俺の言葉に驚く表情が目にはいる。

それもそうだ。

「............そう。

　私と同じ名前を呼んでたの....

　言い方も同じで.... 」

自分と同じ名前なんてびっくりするし、俺がそれを知っている事も。

Aは多分、頭ではわかってないが心のどこかで感じているだな。

「....あれ？どうして、涙なんてでるんだろう.....

　べつに泣きたい訳でもないのに....

　勝手に涙がでてくる.... なんで？」

混乱する娘をもう一回抱きしめて、俺も我慢していた涙を流した。

コップの縁から溢れそうなどうしようもない気持ちを今になって流す事になるなんて思ってもいないことだった。