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「ごちそうさま!」


黙々と食べていると、最初に食べ終わったのは娘だった。


「お母さん、お弁当はできてる?」
「ええ、後はフタして包んで終わりよ。もう、行くの?」
「うん。ちょっと、寄る所があって」
「じゃあ、急いで準備するからそこで待ってなさい」
「うん!でも、そこまで急いでないから慌てなくていいからね〜」
「わかったわ」


そう言って、妻はキッチンヘと姿を消した。


「そういえば、お父さん」


2人の会話を聞きつつ、みそ汁をすすっていた時、今度は俺に話しを振ってきた。


「なんだ?」
「さっき、変な夢みたって言ってたよね?」
「ああ、それがどうかしたのか?」


そう言うと、娘は神妙な面持ちでこう口にした。


「実はね。私も変な夢みたんだよね...」
「そうなのか?」
「うん。しかも、若かりしお父さんがでてきてさぁ〜」
「なんだよそれ。俺の若い頃なんて知ってるのか?」


笑いながら、またみそ汁を飲んでいると娘はこう言う。


「知ってるよ!
 この前、お父さんの高校時代のアルバムでみつけたもん。
 しかも、及川さんもいたし!」

「....そうなのか。で、内容はどんなものなんだ?」


娘の口から及川の名前がでて、しかも目がハートになった時ちょっとムカついた。
が、その感情は心の片隅に置いといて、流すかのように話を進めた。
すると、娘はキッチンにいる母親の様子をうかがいながら小声でこう話しはじめた。


「.....それでね。

 これ、お母さんに聞こえたら、もしかしたら離婚の危機があるかもだけどね」


「なんだよ、離婚の危機って...」


「まあ、そんな事ないかもだけどでね!

 .....えっとね、家の近くにある小高い公園あるでしょ?」
 

「ああ、それで?」


「そこでね、高校生のお父さんが海が見えるあの場所で白いチューリップの花束を持って、
 
 丁度私と同じぐらいの身長で綺麗な人にその花束を渡してるの。

 俺の気持ちを受け取ってくださいって.....

 そしたら、その女の人は笑顔で笑ってて泣いてたの。

 そんで、その花束を受け取って一言、はい。って返事をしたの。

 そしたらね、これって偶然だと思うだけど.....

 って、お、お父さん!?」

.


.



娘の驚く姿など目にも入らなく俺は、いつの間にか手に持っていた箸をその場で落とした。


床に散らばった箸は無惨な姿だったが、俺の姿も無惨な姿だった。


そして、力強く抱きしめた娘の体は、とても暖かった。

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作者名:アルテミス | 作成日時:2018年6月17日 19時

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