相澤先生のワンナイト (ページ4)

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４夜ページ4

翌朝。

私は、スーツ姿でパンプスの音を響かせながら校内の廊下を全力疾走していた。
生徒指導の先生に見られたら、怒られること間違いない。

しかしながら、こればかりは仕方ないのだ。
相澤先生について考えていたら寝るタイミングを逃し、見事に寝坊した。

勢い任せに事務室の扉を横に滑らせ、出勤を記録する機械に名札をスキャンさせてタイムカードを刻ませる。

「ギリギリセーフ…」

ゼェゼェと息を詰まらせながら、肩を上下させる。
膝に手を置いて一息ついているせいか、視界は白い床だけだった。

それもつかの間、気怠げな低い声が頭上から聞こえた。

「アウトですよ。雄英職員ならもっと合理的に行動した方が理にかなっているものです。」

ピシャリとお叱りを受ける。
ビクッと肩を弾ませた私は、申し訳なさそうに肩をしぼませた。

…いや、待って。おかしい。
殆(ほとん)どが機械化されたセキュリティ万全の国立雄英高等学校において、事務職員は私１人しか居ないはずだ。

半ば私の私有地と化しているこの事務室に、私以外の職員が居るはずない。

誰の声なのか、私はおずおずと顔を上げた。

「…そんなしかめっ面しなくても良いじゃないですか。それと右側。寝癖ついてますよ。」

目の前には私が寝坊した元凶(げんきょう)、相澤消太が居た。
昨夜のことはまるで忘れたかのように、目の前の彼は普段通りの佇まいをしている。

首に巻かれた操縛布が忌々しく見えた。

「Aさん、聞こえてますか？」

足音を立てず、相澤先生がこちらへ近づいてくる。

「あ、あの。昨夜のあれは何だったんですか。」

ピタリと相澤先生が立ち止まった。

私は手ぐしで寝癖を落ち着かせながら、昨夜を思い出して頬を染めた。
ドキドキと胸が高鳴る。

これじゃあ、まるで青春真っ只中の学生と大差ないじゃないか。
分かっていても頬の熱は収まるわけがない。

どこか恥ずかしくなった私は、視線を自分のデスクにそらした。