相澤先生のワンナイト (ページ21)

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21夜ページ21

日が落ちた午後7:00。

できるだけ仕事を終わらせたい私は、カタカタと忙しくキーボードを打ち込みながら、相澤先生が事務室へ訪れるのを待っていた。

「終わった〜」

二酸化炭素を吐き出しながら、グイーッと大きな伸びをする。

完成した資料を満足気な表情で保存し、私はパソコンをシャットダウンしようとマウスを動かす。

そして、いつ相澤先生が来ても良いように帰り支度を始めた。

そこへ、タイミングよく相澤先生が訪れる。

「…A。マイクに何か言ったのか」

来て早々に、不服そうな声色で話しかけられた。

「えっ…？特に何も言ってないですけど…」

そう答えるも、相澤先生は虫の居所が悪そうなままだった。
わなわなと手が震えている。

「今日、一日中ずっと、アイツにお前の事を聞かれ続けた」

「な、なんでですか？」

「そんなの俺が知りたい」

溜息をつきながら、困ったように彼は顔を抑える。

「そういえば。今朝山田先生がいらっしゃって、私の着てる服を相澤先生の服だって見抜いてましたよ。」

それを聞いた途端、相澤先生は諦めたように天を仰いだ。

無表情で天井をただ眺めている彼は、一体何を考えているんだろう。

「…なるほどな。」

「それと、相澤先生。」

「どうした？」

私は頭の片隅にあった疑問を投げかけた。

「サキュバスの個性、大丈夫なんですか？」

「あぁ。俺もなんでかよく分からないが、今夜はそんなにキツくない」

どこか安心した顔で話す相澤先生は、じわりじわりと私の方へ近寄る。

「だが…1回はいいだろ？」

啄むように私の唇へ熱が触れた。
チュッと可愛らしい音を鳴らしてそれは離れる。

今度は私がわなわなと手を震わせた。

「と、突然は、ダメです…！！」

「あー、聞こえないなー」

とぼけたフリをする相澤先生は、楽しそうに私の隣へ椅子を持ってきた。

そしてそのまま腰掛ける。

「朝、話そうと思ってたことなんだが…」

舞台の場面転換のように真面目な雰囲気へ切り替えた彼は、真っ直ぐな視線で私を捉えた。

「朝、ですか？」

「あぁ。…A、今日まで本当にありがとう」

今まで年上の人から、こんなにも真面目にお礼を言われた事があっただろうか。

「い、いえ。私も相澤先生と以前より仲良くなれて良かったですし…！」

慣れないむず痒さに、私は照れ笑いを浮かべた。
だが、相澤先生は真逆の反応だ。

「仲良く、か。」