相澤先生のワンナイト (ページ14)

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14夜ページ14

「まもなく、２番線ホームに電車が参ります。黄色い線の内側でお待ちください。」

日本語のアナウンスが流れた後、すぐさま同様のアナウンスが英語で流れた。
初めて降りる駅。
ここが相澤先生の最寄りなのかぁ…としみじみしながら、私はメモを頼りに改札を出ていく。

駅からは多少歩くらしい。

私は改札を出てすぐ、タクシーを呼び止めた。
行き先を告げると、運転手はすぐさま車を発進させる。

車内は終始無言だった。
私はスマートフォンのロックを片手で解除する。

LIMEで相澤先生のトーク画面を確認するも、先程送ったメッセージには、既読すらついていない。

やっぱり、嫌われちゃったかな。

何も変化がないその画面を見ながら、私は小さくため息をついた。

「お客さん、着きましたよ。」

「え、あ。ありがとうございます。」

現金を出す事が煩わしかった私は、そのままスマホで決済をした。
タクシーを降りると、そのまま車は走り去っていく。

徐々に小さくなる車の後ろ姿から目を背け、私は目の前の高層マンションを見上げた。

「うわぁ…。」

圧迫感のあるグレーのビルは、周辺のどの建物よりも高い。
キョロキョロと外観を眺めながら、私はマンションのエントランスに入った。

すると、警備員の人が入り口のすぐそばに立っている。
その様子を見て、相澤先生は住む世界が違う人だと私は一人納得した。

「…。」

ジロジロと警備員の人に凝視される。
住人か見定められているのだろう。

私は鞄から名刺を取り出し、相澤先生に用があることを伝えた。

「確認いたしますので、お待ちいただけますか？」

「は、はい。」

スタスタと警備員が壁の方へ寄り、胸元に着けられたトランシーバーでどこかへ確認を取っていた。

そして、連絡が着いたのかこちらへ近寄ってくる。

「来客についてのご連絡は、相澤様から頂いてないですね。念のためお部屋の方へ確認を取りましたが、お留守の様でした。」

さっさと帰れとでも言いたげな目でこちらを見られた。

「え、いや。でも…。」

相澤先生との関係を証明できるものが名刺しかない今、私はどうすればいいのか。
術を失った私は、鞄から薬瓶を取り出した。

「あの、せめてこれだけでも相澤さんに届けていただけませんか？渡せば相澤さんにはわかっていただけると思うので。」

「すみませんが…」

警備員が断ろうとしたとき、エレベーターが１階に停止した音が聞こえ、中から人が出てきた。