隣人の鷹見さん (ページ5)

今日:6 hit、昨日:6 hit、合計:78,512 hit

５羽目ページ5

また鷹見さんが失踪した。
相変わらず郵便受けは野菜の詰め放題状態。

鷹見さんがホークスであると気づいた時のワクワク感は、とうの昔に消えていた。

サイン貰いたいなとか図々しい考えが少し浮かんだが、今はそっとしておこうという考え方の方が強い。

自宅位はヒーロー活動を忘れたいかもしれない。

謎の気遣いが思考を埋めつくした結果、私は今まで通りただのお隣さんで居ようと思ったのだ。

そんな時、ピンポンとインターホンがなった。

チェーン式の内鍵を付けたまま、ゆっくりと玄関扉を開ける。

そこには、いつかの女の人が立っていた。

数週間前、ホークスと階段でキスしてた人が、ゲンナリした様子でそこに居る。

しかしながら、私は初めてあった体(てい)を装った。

「あの、どちら様でしょうか？」

「…私、隣の鷹見さんの知り合いで…。最近彼と連絡が取れないので、何か知らないかなと思って。」

生気を失ったような猫背の女性は、ずっと下を向いている。

じっくり全身を見ると、服装は華やかな社会人ファッションなのに顔のメイクはボロボロで髪もボサボサだった。

まるで泣きじゃくった幼子のようだ。
何かあったのだろうか。

「鷹見さんとは会っていないので分からないです。…何か、心配な事でもあるんですか？」

「…い、いえ。その、わたし…」

彼女の瞳から涙が溢れ、コンクリートの地面に黒い円形のシミを作る。

泣き出してしまった…。
どうしたものかと思いつつ、私は彼女を自室へ上げることにした。