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「土井半助!俺と勝負しろ!!」


苦無をギュッと握りしめたその男は、一心にこちらを見つめている。
ピタリと採点の手を止めた土井先生は、呆れ顔で微笑んだ。


「まさかこんな雨の日にもくるとはな…。尊奈門くん、とりあえず中までおいでよ。」


「なぜだ!」


「なぜって…、そこだと濡れて風邪をひいてしまうだろう?」


諭すように話しかける土井先生。
しばらく考えた後、しぶしぶといった足取りでその男は中に上がり込んだ。


「まったく、びしょ濡れじゃないか」


海から上がった人のように濡れきった衣類を身に付けた男は、チラリと私を盗み見た。


「おい、土井半助。この方は一体誰なんだ…?」


「Aさんだよ。事務員として最近雇われたんだ。」


一枚の布を取り出した土井先生は、その男の頭にふわりと布を被せる。


「…すまない。」


大人しくそれを受け取り、水を吸収していく。


「Aさん、こちらはタソガレドキの諸泉尊奈門くん。」


ペコリと諸泉くんがお辞儀した。


「…どうも、諸泉尊奈門です。」


私はすかさずはじめましてと返す。


「Aさんは、どうして事務員になったんですか…?」


世間話かのように痛い所を尋ねられた。
たどたどしく、私は学園長の親戚だと嘘をつく。


チラリと土井先生に視線で訴えかけると、彼はニコリと微笑んだ。


「Aさんは少し前まで留学していて、日本に帰ってきたばかりなんだ。日本の生活に慣れるまで、事務員として雇われたんだよ。」


軽く柔らかな声で、土井先生は淡々と説明していく。


「そうなのか、大変だな。」


心配するような視線を向けられた。
そしてそのまま、諸泉くんは濡れた布を畳み置いて長屋の廊下へと出る。


「別の機会にまたくる。わかったか、土井半助!」


「あぁ、わかったよ…!」


敵視するように視線を交わす。
私が一度(まばた)きすると、視界の中にいたはずの諸泉くんは居なくなっていた。


「さて、採点を再開しましょうか」


微笑を口角に浮かべた土井先生に、私は「はい」と返事した。









その夜。
湯屋に行く途中で食満くんと会った。


「あ、A…。」


少しばかり毛先が濡れている彼は、入浴してきたばかりだろうか。
そのせいか、頬の辺りが紅潮して見えた。

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作品ジャンル:恋愛
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く〜ちゃん(プロフ) - つときょさん» ありがとうございます!面白いって感じて頂けるのすっごく嬉しいです!!遅くなるかもしれませんが、絶対更新します…!(滝夜叉丸くん良いですよね!短編とかでぜひ夢主と絡ませてみたいです笑) (2020年7月8日 11時) (レス) id: 61072eb2ca (このIDを非表示/違反報告)
つときょ(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。私はあまり転生系が好きではないのですがこの作品はとても面白くてついつい一気見しちゃいました!お体に気をつけてゆっくりでいいのでぜひこれからも更新してください!(できれば滝夜叉丸とかと絡ませてもらいたいです!) (2020年7月6日 22時) (レス) id: af8443efa9 (このIDを非表示/違反報告)
く〜ちゃん(プロフ) - ありすさん» コメントありがとうございます!温かいお言葉をかけて頂き、とても嬉しいです。今以上に楽しんで頂けますよう、更新頑張りますね…! (2020年6月22日 3時) (レス) id: 581cf551f6 (このIDを非表示/違反報告)
ありす(プロフ) - コメント失礼します!面白くてサクサク読んじゃいました…!!夢主ちゃんが喋らない感じでお話が進んでいくのも新しくて新鮮で良いですね(*´ `)更新楽しみにしています! (2020年6月20日 12時) (レス) id: 876b37614f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:く〜ちゃん | 作成日時:2020年4月27日 2時

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