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「Aちゃん」


調理場で早速雑炊を作っていた私は、声のした方へ振り返った。


「ただいま」


いつも通りの忍装束を着た雑渡さんが、そこに佇んでいた。


「さっきは急に消えて悪かった」


雑炊の本を渡してパッと消えた彼は、ジリジリと間合いを詰めてくる。


「忍術学園に行ってきたんだ」


私の目の前に立った彼は、私を見下ろしながら懐に手を忍ばせた。
何をしてきたのか尋ねると、雑渡さんは含み笑いを溢す。


「目、瞑ってごらん」


私は言われた通り、両目のまぶたを降ろした。


「よし。偉いぞA。」


突然の呼び捨てに驚いた私は、「えっ」と言いそうになるのを手で押さえる。


「ダメだよA。ほら、口を開いて…」


大人しく口を開くと、その中にナニカを放り込まれた。


「甘過ぎないといいが…」


私は味わうように、それを口の中で舐めた。
ほろほろと溶けていく甘い塊は、あっという間に消えてしまった。


「砂糖菓子だよ。Aみたいに可愛かったから、買ってきたんだ」


楽し気にそう話した雑渡さんは、右手に持った小箱の中身を見せてくれた。
中には色とりどりの花が一口サイズの砂糖菓子となって存在している。


「城に戻る途中、茶菓子を売る店がある」


話ながら、彼は赤い椿を箱から取り出した。


「今日は珍しく列ができていてね、」


取り出したそれを、ズイッと私の口元へ寄せる。


「何だろうと思ったら、これが売っていたんだ。」


パクリと私は椿を頬張った。


「気に入った?」


目元を三日月に微笑ませた彼は、意外にも柔らかい声を発する。
それにコクリと頷くと、雑渡さんは満足そうに笑った。


「なら、今からこれは君の物だ」


箱ごとお菓子を手渡される。
お礼を伝えながら、私はそれを受け取った。


「雑炊は、私が作っておくよ。…休んでおいで?」


さりげなく気遣われた私は、彼に全てを任せて自室へと向かった。

む→←な



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設定タグ:忍たま , 忍たま乱太郎 , RKRN   
作品ジャンル:恋愛
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く〜ちゃん(プロフ) - つときょさん» ありがとうございます!面白いって感じて頂けるのすっごく嬉しいです!!遅くなるかもしれませんが、絶対更新します…!(滝夜叉丸くん良いですよね!短編とかでぜひ夢主と絡ませてみたいです笑) (2020年7月8日 11時) (レス) id: 61072eb2ca (このIDを非表示/違反報告)
つときょ(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。私はあまり転生系が好きではないのですがこの作品はとても面白くてついつい一気見しちゃいました!お体に気をつけてゆっくりでいいのでぜひこれからも更新してください!(できれば滝夜叉丸とかと絡ませてもらいたいです!) (2020年7月6日 22時) (レス) id: af8443efa9 (このIDを非表示/違反報告)
く〜ちゃん(プロフ) - ありすさん» コメントありがとうございます!温かいお言葉をかけて頂き、とても嬉しいです。今以上に楽しんで頂けますよう、更新頑張りますね…! (2020年6月22日 3時) (レス) id: 581cf551f6 (このIDを非表示/違反報告)
ありす(プロフ) - コメント失礼します!面白くてサクサク読んじゃいました…!!夢主ちゃんが喋らない感じでお話が進んでいくのも新しくて新鮮で良いですね(*´ `)更新楽しみにしています! (2020年6月20日 12時) (レス) id: 876b37614f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:く〜ちゃん | 作成日時:2020年4月27日 2時

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