君を笑かしたい！！[短編集]

<ぺこぱ 松陰寺さん> ページ29

『なんか、眠くなってきたわ』

時計を見ると午前1時を回っていた

勇太と通話を始めてもう３時間経っている

勇太とは恋人同士…ってわけでは無いが、それと同じくらい、むしろ恋人以上に仲の良い友達

「もう寝るか？」

『んー、もうちょっとだけ』

「あんま無理するなよ」

『大丈夫』

ずっと、勇太と話していたい

一緒にいたい

そんな感情を抱き始めたのはいつだったか、もう覚えてない

『なんか最近、いろんな人から悩み事とか相談されること多くてさ、頼られてるって思うと嬉しいけど、ちょっと疲れるんだよね』

「確かにな。俺も、恋愛相談とかされたらなんて言えばいいかわからん」

『うわぁ、恋愛相談は難しいよね』

「Aは気になる人とかおらんの？」

『私？』

「たまには相談のってやるよ」

『気になる人は…まぁ、いるよ？』

「へぇー、いるんだ。どんな人？」

『勇太が聞きたいだけでしょ？』

「いいやろ。で、どんな人？」

恥ずかしいけど、しつこく聞いてくるから仕方なく答える

『……好きなことに熱心な人』

「うん」

『周りの人を大切にする人』

「うん」

『……まだ聞く？』

「じゃあ、見た目は？」

『見た目？…髪のボリュームがすごい』

「髪のボリューム？」

少し癖のある笑い声が聞こえてくる

『いつも髪の毛ファッサファッサしてる』

「どんなイメージだよ」

『あとね、見た目から優しさが溢れ出てる』

「そうか」

優しく相槌を打ってくれる

声は聞こえるのに触れられない
顔が見れないのがもどかしくて、涙がこぼれそうになる

『勇太…会いたい』

「今から行っていい？」

『来て』

「待っとけ」と言って、電話がきられた
しばらくするとインターフォンが鳴って、ドアを開けると立っていた勇太に、勢いのまま抱きついた

『会いたかった』

「俺も」

泣きそうになる私を、勇太はゆっくり撫でてくれる

その温かさに安心して、涙を流す私を見て、彼は優しく微笑んだ

「笑った顔も好きやけど、泣いた顔も可愛いな」

『……うるさい』

恥ずかしくなって彼の肩に顔をうずめた

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