【銀魂】志村家長女が、真選組局長と結ばれまして。【近藤勲】

2人、夜空の下 ページ49

〜貴方side〜


颯爽と帰って行った兎を見送り、居間へ戻ろうとした時だった。
襖からちょこんと、近藤さんが顔を覗かせていた。

中の皆はまだ寝ているだろうと思い、小声で声を掛ける。


「近藤さん、起きたんですか？」

「はい、何か目が覚めてしまって…2人で呑み直しませんか？」


そう言って彼は、2人分のグラスと残った酒を手に、外へ赴いた。
肩を並べてお互いにお酌し、夜空を見上げた。

今年は例年より暖かく、月見にはもってこいだとか。とはいえ、寒いのには変わりはないのだが。
改めて空を見上げ、今日の月が小さな光を帯びた月である事に気付いた。新月と言っても良い程だ。

人々が趣を感じやすいのは満月だろう。
だが、三日月や新月も味が有り、私は好きだ。

どちらも見える所は限られるが、しっかりとそこに存在している。
それは人間の在り方も同じだと感じる。

見えない所にも自分の知らない人が居て、自分と同じ時を生きている。

そう思うと、やはり人と月は、深い繋がりがあるのだと思える。

そんな哲学的な事を考えていると、近藤さんから声を掛けられている事に気付いた。


「だ、大丈夫ですか？酔ってしまいましたか？」

「すみません、大丈夫です。少し考え込んでしまって…」


そう言うと、彼は私の身体を引き寄せ、頭を自身の肩に乗せた。

一瞬動揺したが、彼の事だ。
きっと私の事を心配して、少しでも休めればと思ってくれたのだろう。
だが、いつもの彼なら羞恥心が勝り、とてもしそうにない事を難なくやっている。

酔いが醒め切っていないのだと悟り、そのまま受け流した。

そこからは、唯々沈黙が続いた。
会話が弾む訳でもなく、唯々酒を呑んでいるだけだ。

何があったのかと心配になり顔色を伺うと、今まで以上に真っ赤になっていた。

それは、酒の所為だけではなさそうだ。

それをからかう様に手を握ると、案の定。
何とも面白い反応をしていた。

前はこんな反応を見て、自分も恥ずかしがっていたが、今はそれを面白く思える様になってしまった。

こんな成長もありなのかと思いながら、2人でもう一度空を見上げた。


「近藤さん、来年も宜しくお願いします。」

「はい、こちらこそ。」


来年も、この幸せが続きます様に───。
そう、天の星々に願いを込め、もう一度酒を酌み交わした。

カンとグラスの音が鳴り響いたと同時に、除夜の鐘が江戸中に響き渡った。

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