イノシシの王子様 壱(伊之助) ページ1
きっかけは担任の宇髄先生のこの一言だった。
「お前ら、今回わがクラスの出し物が決定した。やるからには派手派手でいくぞ!!!」
秋。高校生活の目玉、文化祭。
今年はなぜか、クラス対抗!昔話選手権!と称して劇をすることになったらしい。
うちのクラスは「桃太郎」。
桃太郎役は炭治郎、従者はなぜか伊之助が「イノシシ」、善逸が「スズメ」。なぜ?
マトモなのは村田さんの犬だけ。どんなパーティだ。
『今どき、高校生にもなって劇なんかやる?』
わたしはため息をつきながら針に糸を通す。
「やるからには1番を取りたいよな!」
ニコニコするパン屋の長男。
「どうせやるならお姫様が出てくる話がよかったなぁ。禰豆子ちゃんとAちゃんがお姫様で、俺が王子様…ムフフ。俺は両手に花!! 二人とも絶対カワイイよぉぉぉぉ!!!!」
通常運転の善逸。
「おいお前ら!!!! イノシシは山の王なんだ!! 鬼なんか耳じゃねぇ!!! みんな俺様についてこい!!」
従者なのにいばっている伊之助。
『伊之助…目じゃない、ね。』
一応訂正するわたし。
だいたい派手派手な桃太郎ってどんなだ。
練習中に伊之助が壊したイノシシの被りものをつくろいながら、わたしはため息をついた。
休憩中に炭治郎と善逸が飲み物を買いに行ったので、教室には私と伊之助の2人きり。
伊之助は先ほどから、拾ったらしいどんぐりを熱心に磨いている。
「みろ!!! ツヤツヤになった!!!」
と嬉しそうに見せてくる。
マッチョな美青年がどんぐり…。 なぜどんぐり…。
まぁ絵になるからいいけど。
わたしは目の前に座る伊之助を眺める。
鍛えられた身体とはアンバランスな美しい顔。パッチリした両目と長いまつ毛。
身体はともかく、首から上だけでいったら伊之助の方がお姫様なんじゃなかろうか。
背も高いほうだしショートカットだし一重だし…どちらかというと、わたしの方が男役って感じ。
そんなことを考えながらぼんやり眺めていると、不意に伊之助が顔を上げた。
「なんだよ。俺様の顔になんか文句あんのか。」
あ、やっぱり声もお姫様じゃないや。
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まるこ(プロフ) - あやももさん» ありがとうございます!頑張りますのでまた見に来てください。 (2020年5月2日 0時) (レス) id: 4dbe1241d6 (このIDを非表示/違反報告)
あやもも(プロフ) - 面白かったです!これからも更新頑張ってください!! (2020年5月2日 0時) (レス) id: 0b584a1ab2 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2020年4月29日 0時