【リレー小説】スカイハイ転生学園！～職業体験編～ (ページ25)

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値札、値札、値札。【鶯崎林檎】ページ25

「よし、昼食にしようか！」
アップルさんの、ザ・明朗快活！みたいな声が店内に響き渡った次の瞬間、場がいっきに沸き上がった。
もちろんあたしも、拳を密かに握って「よし！」と呟いた人間の一人だ。
だってさ、『唐揚げモータース』に来た目的が昼食だったんだから。
なんたって、『唐揚げモータース』は、おまけの唐揚げによって大成功を果たしたお店だからね。
ここに体験に来たのに、唐揚げを食べないなんてゲームで入れないはずの海に潜って観音様の像を取ってくるくらいありえないことだからね。
だから、唐揚げを食べるため、唐揚げの味を舌に覚えさせて家での再現を試みるため、とにかく手伝いを頑張った。
洗車のホースが変な方向向いて顔面に水がかかってずぶ濡れになったり、なんか知らんけどめんどくさそうなおばさんクレーマーに怒鳴られたり、ガソリンの機会が故障したりとか色々と大変だったけど、唐揚げが食べられるならそんなもの関係ない。
そんな具合に、私の心の中は期待と喜びでいっぱいだった。
表現しがたい期待と喜び。
頬に熱が集まって行って、顔を見ていないけれども紅潮しているのが判る。
　「じゃー、こっちのテーブルで食べよっか」
　「はい！」
職業体験に来ていたあたしを含む生徒たちは、期待が詰まった目をアップルさんに向けた。
その目線に気付いたアップルさんは一瞬戸惑った表情を見せたものの、すぐに白い歯を見せた。
☆★☆★
　「ん！なんだこれ！」
　「うわーっ！」
唐揚げを口に運んで、次々と歓喜の雄叫びをあげる生徒たち。
え、マジで？
あたしは目をキラキラさせながら、唐揚げに思いきり食いついた。
パリッと軽い音を立てて唐揚げに思いきり食いついた。
表面がカリッとしていて、それであって中はとても柔らかくて味が染みわたっていた。
それに表面に程よく振られたブラックペッパーが絡みついて、なんとも言えない味が響く。
その味が口の中で絡み合い、暴力的な幸福があたしを襲った。
しばらくの間、周りがシーンと水を打ったように静まり返った。みんな、唐揚げの味に絶句してしまったようである。
いやもう凄すぎるよ、アップルさん。さすが『唐揚げモータース』。
なんだかアップルさんと同じ意味の名前であるあたしが、おこがましく感じてしまうようである。
静かな部屋に、フリーズしているあたし達に聞かせるような軽い咀嚼音が響いた。