【リレー小説】スカイハイ転生学園！～職業体験編～ (ページ19)

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懐かしき緑の思い出。【夜霞樹】ページ19

四方緑に囲まれた、真っ赤な鳥居。鳥の鳴き声や草葉の歓迎するような明るいメロディー。最近では中々お目にかかれない自然の風景に柄にも無く心がはしゃいでしまう。

「樹先輩おはようございますっス！樹先輩も職場体験恐羅神社だったんスね！」

そう、目を輝かせて太陽のような視線を送る彼が居なければ。

此処で勘違いしないで欲しいのは、断じて彼が嫌いという訳では無い。純粋にオレを好いてくれるのは有難いし、何よりこの真っ直ぐな笑顔は後輩として可愛くて仕方がない。ただ、先輩としての威厳というか、要はカッコつけだ。

「やあ麗都君おはよう。相変わらず元気だな。所で希望さんは？」

「希望ならさっき少し散策してくるって神社の方に行ったっス！」

「そっか、じゃあもう来てるんだね。なら君は希望さんをそろそろ呼んできてくれるかな？俺は本田先生を呼んでくるよ」

「了解っス！」

オレに丁寧に礼をし、麗都君は神社の方へと消えていった。彼ならきっと迷うことは無いだろう。

純粋な瞳に体いっぱいに伝わる想い。穢れなき眼で相手の良い所だけを得ようとする正義の瞳は、昔のオレにそっくりだった。

『うわぁー！皐月にい凄い！ねえねえどうやってやったの？ぼ、俺もしたい！』

『ん？まずお前はナイフの持ち方からだな。そんなひょろっひょろな持ち方じゃ手から滑り落ちるぞ』

目を瞑ればビデオのように欠けることなく流れる映像。俺より少し暗めの茶髪に、常時被られたフード。そのフードから微かに除く鋭い緑と、圧倒的なパフォーマンスがあまりに魅力的だったお兄ちゃんのような存在。頭を乱暴に撫でるあの荒さは転生してもなお忘れられない感覚として体を蝕み続けた。

オレは頭を振り払い、木の上に登る。思えばこれも皐月にいを真似して出来るようになったんだっけ。なんて彼を思い出し弱る心に苦笑が漏れる。

転生してるかすらも分からぬ相手に何時までも縋るなんてダメだな。

オレは何本もの木々を伝い、先生を探しに行く。のどかな自然の空気を肺いっぱいに吸い込み、少し弱気になった心臓を叩いた。お前なら行ける。強くなる為に此処で魔力を上げに来たんだろ。そう自分を鼓舞しながら、神社前で俺たちを待つ先生の元へ着地した。

「やっと、やっと見つけたよ。俺の大切な樹。今は迎えに行けないが、後で絶対に迎えに行くから我慢して待ってるんだぞ」

不毛な声は、森が作り出すメロディーによってかき消され、風に乗って遠くへと姿を消した。